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ニュース解説

国内準大手、米国市場にフォーカス…田辺三菱や協和キリンが自社展開へ、日本市場の不透明感背景に

国内の準大手クラスの製薬企業が、米国市場に焦点を当てています。

 

田辺三菱製薬は今年に入り、米国に販売会社を設立。2016年度中に筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬の自社販売に乗り出します。協和発酵キリンも、複数の新製品投入に向けた販売網の整備に取り掛かりました。

 

田辺三菱が向こう5年間でM&Aを含め2000億円以上の投資を計画するなど、米国での事業基盤構築に向けた投資も加速。薬価制度の見直しが日本市場の先行きに不透明感をもたらす中、各社とも安定成長が見込まれる米国市場での収益確保を狙っています。

 

 

田辺三菱、M&A含め2000億円超投資

田辺三菱製薬は2月、米国に販売子会社「MTファーマアメリカ」を設立しました。同社は現在、米国で筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「MCI-186」(日本製品名「ラジカット」)を開発中。2016年度中に、同社初となる米国での自社販売に乗り出します。

 

昨年11月に公表した2020年度までの5カ年の中期経営計画では、米国市場を成長の牽引役に据えました。

 

中計期間中にはM&Aも含めて2000億円以上を米国に投資する計画。MCI-186を軸に、神経内科領域に強い会社の買収などを通じて販売網や製品ラインアップを拡充する方針です。

 

 ALS薬起点に米国売上高800億円

三津家正之社長は中計説明会で「MCI-186を起点に、新薬の投入やM&Aにより事業を本格的に展開し、日本に次ぐ収益の柱としたい」と語りました。

 

2020年度の米国売上高は800億円を計画。海外売上高は2000億円(2015年度見込み1146億円)、海外売上高比率は40%(同27.4%)に引き上げます。

田辺三菱製薬_海外売上高・売上高比の推移

 

田辺三菱は、スイス・ノバルティスに導出し、年間439億円(2014年度実績)のロイヤリティー収入をもたらす多発性硬化症治療薬「ジレニア」の物質特許満了を2019年に控えます。米国市場への進出は「成長上不可欠」(三津家社長)なのです。

 

協和発酵キリン「ノウリアスト」など投入

協和発酵キリンも、米国での自社販売体制の整備を急いでいます。

 

1月に公表した2020年までの中期経営計画では、「グローバル競争力の向上」を戦略の柱に位置付け、2015年に31.4%だった海外売上高比率を50%まで高めることを目標に掲げました。中でも重要な課題として取り組むのが、米国での自販体制の構築です。

 

大型期待のKRN23見据え基盤固め 

同社は2017~2018年にかけて、米国で抗がん剤「KW-0761」(日本製品名「ポテリジオ」)とパーキンソン病治療薬「KW-6002」(同「ノウリアスト」)の発売を計画しています。欧州子会社プロストラカンが持つ米国の事業基盤をベースに、製品特性に応じた販売体制を構築していく方針です。

 

2020年以降には、ピーク時に世界で1500億円の売り上げを期待する、くる病治療薬「KRN23」の発売も控えます。先行投入する2製品で事業基盤を固め、KRN23の大型化につなげたい考えです。

 

ポストラツーダ急ぐ大日本住友、塩野義は成長軌道に

米国市場に成長機会を求める準大手は、これら2社に限りません。

 

大日本住友製薬は2015年度、海外売上高比率が初めて50%を超える見込みです。米セプラコール(現サノビオン)を買収して米国市場に本格参入したのは2009年。グローバル戦略品として2011年に投入した抗精神病薬「ラツーダ」の米国売上高は今年度1000億円を超える見通しで、米国事業を牽引しています。

 

「ラツーダ」は2019年に特許切れを控えており、大日本住友はポストラツーダの開発を急いでいます。2012年にはバイオベンチャーの米ボストン・バイオ・メディカルを買収。今後はがん領域に事業を拡大していく方針で、開発投資を加速させています。

 

「オスフィーナ」着実に成長 

2008年の米サイエル(現シオノギインク)買収で米国に自販体制を築いた塩野義製薬は、ようやく米国事業が成長軌道に乗ってきました。

 

買収当初はコントロールに苦慮し、営業赤字が続いていましたが、2013年に発売した自社新薬の膣萎縮症治療薬「オスフィーナ」が着実に売り上げを伸ばしています。

大日本住友製薬と塩野義製薬の米国売上高の推移

 

「日本市場は予測が難しくなった」

各社が米国市場に注力するのは、日本市場の先行きに不透明感が漂っているからです。

 

「日本の市場は本当に予測が難しくなったと思っている」。協和発酵キリンの花井陳雄社長は2月の中期経営計画説明会で、日本市場の予見性が低下しているとの認識を示しました。

 

その要因として指摘したのが、後発医薬品の使用促進や薬価制度の見直し、費用対効果評価の試行的導入など。「昨今の薬価をめぐる動きは、製薬企業にとって予測が難しくなった。こうやったら(日本市場の売り上げを)きっちり伸ばせる、ということを言うのは難しい」。花井社長はこぼします。

 

こうした認識は各社とも共通しているようです。田辺三菱製薬の三津家正之社長も1月の中計説明会で「薬価制度の見直し、後発品の使用促進により、経営環境は非常に厳しい状況に直面している」と、中計で米国中心に成長する絵を描いた理由を語りました。

 

日本市場では、薬価に対する圧力が高まっています。

 

2016年度薬価制度改革では、予想を超えて売り上げが巨額となった医薬品の薬価を大幅に下げる「特例拡大再算定」が導入。2016~2018年度の3年連続の薬価改定の先には、毎年改定の実施もちらつきます。

 

日本市場の魅力低下?

新薬創出・適応外薬解消等促進加算の導入や、承認審査の迅速化などを背景に、一時は事業環境が好転としたと言われた日本市場。数年前には外資系企業の参入も相次ぎました。

 

しかし今では、日本市場への投資の縮小により「日本が世界同時開発の対象から外れる」(米国研究製薬工業協会)といった懸念も出始めています。

 

米IMSインスティチュートのレポートによると、2016~2020年に見込まれる米国市場の年平均成長率は5~8%。対する日本市場は0~3%にとどまり、先進国ではフランス(マイナス3~0%)に次いで低い成長率となる見通しです。

 

国内準大手に広がる米国市場に成長機会を求める動きは、日本市場の魅力低下を物語っていると言えます。

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