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政策・制度

【2016薬価制度改革1】消える7000億円の市場…7.8%の大幅引下げ 特例再算定など厳しいメニューずらり

今年4月に実施される2016年度薬価制度改革の最大の目玉は、年間販売額が1000億円を超える医薬品の薬価を最大50%引き下げる「特例拡大再算定」の導入。このほか、後発医薬品の薬価は先発医薬品の半額まで引き下げられ、長期収載品の薬価引き下げルール(いわゆる「Z2」)の適用範囲を拡大するなど、製薬業界にとって厳しい改革メニューが並んでいます。

 

今回の薬価制度改革では、具体的にどのような見直しが行われ、製薬業界にどのような影響を与えるのでしょうか。検討の経緯も含め、5回にわたって詳しく紹介していきます。

 

1回目となる今回は、2016年度薬価改定の全体像を押さえるとともに、個別の改革メニューのポイントを説明します。

 

 

 2000年度以降最大のマイナス改定

まずは、2016年度薬価改定の全体像を見ておきます。

 

2016年度薬価改定の改定率は、公的医療保険で使われる薬剤費をベースにするとマイナス約7.8%。2000年度以降、過去9回の薬価改定で最も大きな引き下げとなります。

 

公的医療保険で使われる薬剤費の総額は9兆円規模とみられていますので、今回の薬価改定によって削減される薬剤費は7000億円ほど。言い換えれば、今回の薬価改定によって、7000億円ほどの市場が一気に消滅してしまうということになります。 

薬価改定率の推移グラフ

 

大幅マイナスの背景に「乖離率拡大」「特例拡大再算定」

今回、引き下げ幅が過去の改定に比べて大きくなった背景には、主に2つの要因があります。

 

1つは、現行薬価と市場実勢価格との平均乖離率が過去の薬価改定に比べて大きかったこと。もう1つは、今回の薬価改定の最大の目玉である「特例拡大再算定」の導入です。下の図を見れば、これら2つの要因が改定率全体に占めるウェートの大きさが分かります。

薬価改定率の内訳グラフ

 

厚生労働省が薬価改定の前年に医薬品の市場実勢価格を把握する目的で行っている薬価調査の結果によると、昨年9月に医療機関や薬局が仕入れた医薬品の購入価格(市場実勢価格)と現行薬価との乖離率は平均約8.8%。2年前の前回改定に比べて0.6ポイント拡大し、2001年度以降では最大となりました。

 

平均乖離率拡大の要因は、2014年度診療報酬・調剤報酬改定で導入された、いわゆる「未妥結減算ルール」にあるとみられています。

 

未妥結減算で価格下落進む

このルールは、毎年9月末の妥結率(医療機関や薬局が仕入れる医薬品のうち、医薬品卸売業者との間で取引価格が決まった医薬品の割合)が50%を下回った医療機関や薬局の診療報酬・調剤報酬を引き下げる仕組み。医療用医薬品の流通問題として長年存在する「未妥結仮納入」を改善するために導入されました。

 

医薬品の取引価格は通常、薬価改定の直後が最も高く、次の薬価改定に向けてだんだんと下がっていく傾向にあります。

 

しかし、未妥結減算ルールの導入によって取引価格の早期妥結が進んだ結果、こうした例年の価格の推移が崩れ、本来ならまだ一定の価格を保っているはずの改定2年目の9月の時点で、すでに薬価改定直前に近い水準まで価格が下落した可能性が指摘されています。

 

こうして平均乖離率が過去に比べて大きくなった結果、今回の薬価改定では市場実勢価格に基づく引き下げ部分だけで過去の薬価改定に匹敵するほどの引き下げ幅となりました。これに、通常の市場拡大再算定や特例再算定、後発医薬品や長期収載品の薬価の見直しによるマイナスが乗り、近年の薬価改定では最も大きい約7.8%という引き下げ幅になったというわけです。

 

「国民皆保険の維持」大義に特例拡大再算定を導入

個別の改革メニューを見ていきましょう。

 

今回の薬価制度改革の最大の目玉は「特例拡大再算定」の導入です。

 

この制度では、年間販売額が1000億円超1500億円以下で予想販売額の1.5倍以上の場合は最大25%、年間販売額が1500億円以上で予測販売額の1.3倍以上の場合は最大50%、薬価を引き下げます。

 

特例拡大再算定は、従来からある「市場拡大再算定」の特例として導入されます。市場拡大再算定はそもそも、適応拡大などで使用実態が大きく変化し、それによって売り上げが予測を超えて拡大した場合に薬価を引き下げる制度(類似薬効比較方式で薬価算定された品目の場合)。しかし今回導入される特例再算定では、こうした使用実態の変化を問わず、単に売り上げが予想を超えた大きくなったというだけの理由で引き下げられます。

 

特例拡大再算定の導入の裏には、医療費の増大が大きな課題となる中、売り上げがあまりに大きい医薬品に対して公的医療保険財政から際限なく支出を続けるのは難しい、という国の判断があります。製薬業界側は「市場で評価されている薬剤を懲罰的に薬価引き下げの対象とするのは理にかなわない」と反発しましたが、厚生労働省は「国民皆保険を維持するため」という大義名分を掲げて押し切りました。 

特例拡大再算定の要件と対象商品

 

 2016年度の薬価改定でこの特例拡大再算定の対象となるのは、C型肝炎治療薬「ソバルディ」と同「ハーボニー」(いずれもギリアド・サイエンシズ)と、抗血小板剤「プラビックス」(サノフィ)、抗がん剤「アバスチン」(中外製薬)の4製品です。

 

ソバルディとハーボニーは最大50%、プラビックスは最大25%の引き下げを受ける可能性があります。アバスチンも最大25%の引き下げにあたる1000億円超の販売額となっていますが、臨床上の有用性が認められ引き下げ幅が緩和されます。

 

特例拡大再算定は大型製品を狙い撃ちにするもので、対象製品を持つ企業には大きなダメージとなります。引き下げ幅も最大50%と大きく、対象製品を収益の柱としている企業には、特に深刻な影響を与えることになりそうです。

 

後発品薬価、先発品の半額に Z2はハードル引き上げ

後発医薬品の薬価は、前回の薬価制度改革に続いてさらに引き下げられます。

 

新たに薬価収載される際の後発医薬品の薬価は現在、先発医薬品の6割となっていますが、今回の薬価制度改革では5割に引き下げます。1つの先発医薬品に10品目を超える後発医薬品が収載される場合(内用薬に限る)は、今でも薬価を先発医薬品の5割に抑えていますが、これも4割に引き下げます。

 

政府が後発医薬品の使用目標を引き上げたことを受け、後発医薬品への置き換えが進まない長期収載品の薬価を引き下げるルール(いわゆる「Z2」)も見直されることになりました。

 

現行のZ2では、置き換え率を「20%未満」「20%以上40%未満」「40%以上60%未満」の3つに分け、それぞれの引き下げ幅を2.0%、1.75%、1.5%としていますが、この区分を「30%未満」「30%以上50%未満」「50%以上70%未満」に引き上げます。

 

引き下げ幅は据え置きますが、置き換え率のハードルが高くなったことで、長期収載品は一層、厳しい状況に置かれることになります。

 

 基礎的医薬品の薬価維持がようやく実現

一方で、製薬業界が長らく導入を求めていた、医療上欠かすことのできない「基礎的医薬品」の薬価を維持するルールが、ようやく実現することになります。医療現場で長年使われている医薬品が採算割れを起こしてしまわないよう、薬価を下支えし、安定供給を担保するのが目的です。

 

このルールの対象となるのは、「一般的なガイドラインに記載され、広く医療機関で使用されているなど、汎用性があるもの」「古くから医療の基盤となっている病原生物に対する医薬品・医療用麻薬」などの要件を満たす医薬品。2016年度薬価改定では134成分617品目に適用されます。

  

先駆導入加算、「先駆け審査指定制度加算」に衣替え

前回の薬価制度改革で導入された「先駆導入加算」は、「先駆け審査指定制度加算」に衣替えし、要件も大幅に見直されます。

 

先駆導入加算は、世界に先駆けて日本で承認を取得した新規作用機序の新薬を評価するために導入されました。要件が厳しく適用を受けるのは極めて難しく、これまでこの加算を受けた品目はありません。今回の見直しでは、今年度から始まった「先駆け審査指定制度」の対象に指定された品目に加算を適用することとし、加算率も現行の10%から「最大20%」に引き上げられます。

 

先駆け審査指定制度の対象には、現在6品目が指定されており、これらの品目は発売までこぎ着ければ加算の適用を受けられることになります。今回の見直しにより、製薬企業にとっては加算適用の予見性が高まるため、開発意欲の向上につながると期待されています。

  

業界団体「総体的に厳しい結果」

2016年度薬価制度改革ではこのほか、新薬創出・適応外薬解消等促進加算が現行要件のまま継続されることとなったほか、新規性の乏しい新薬の薬価算定の見直しとして後発医薬品対策と考えられる新薬の薬価引き下げなどの見直しも行われます。 

2016年度薬価制度改革の主な内容

 

基礎的医薬品の薬価維持ルールの導入や先駆導入加算の見直しなど、製薬業界にとってプラスとなる項目はあるものの、やはり特例拡大再算定の導入を筆頭にマイナス面が目立ちます。

 

日本製薬団体連合会の野木森雅郁会長が「製薬業界にとって総体的に厳しい結果となった」とコメントしているように、今回の薬価制度改革は製薬企業の業績や事業展開に大きな影響を与えることになりそうです。

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