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メッセージアプリで製薬企業は患者にどこまで近づけるか|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、製薬企業がスマートフォンアプリを通じて提供する服薬支援などの患者サポート。これまでほとんど成功例はありませんでしたが、メッセージアプリを使えば患者とのつながりをよる強められる可能性があるといいます。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

WhatsAppにマーケティング担当者が注目

多くの国々でメッセージアプリWhatsAppが動詞として使われるようになってきた。「連絡して」「メールして」と言うのと同じくらい、「WhatsAppして」というフレーズが使われている。

 

WhatsAppの2017年7月の発表によると、このプラットフォームのアクティブユーザーは1日10億人。同年の第3四半期までに、ドイツ人の65%、ブラジル人の56%がWhatsAppを利用した。これほど広く浸透すると、サービスが停止すれば世界中がパニックに陥るだろう。

 

トークアプリ

 

これほど厚いユーザー層を考えると、マーケティング担当者がWhatsAppに注目するのも当然だ。ただ、フェイスブック傘下のこの会社は、最近まで広告を掲載せず、ほかのブランドがWhatsAppのプラットフォームを利用するためのルートも設けていなかった。しかし、このプラットフォームを収益化する初の本格的な試みであるWhatsApp for Businessが登場したことで、変化が生じている。

 

先日開始されたこのパイロットプログラムの一環として、インドの映画チケット会社Bookmyshowは新しいサービスを開始した。電話番号を入力してオンラインで代金を支払ったユーザーに、確認のメッセージと映画館入場用のQRコードをWhatsAppで送信する、というものだ。ユーザーは「ストップ」と返信するだけで、このサービスから退会することもできる。

 

ほとんど成功しなかった製薬企業の患者支援アプリ

製薬業界も、こうした事例から学べることがありそうだ。

 

製薬企業は長い間、服薬アドヒアランスの改善や患者支援のため、患者とのつながりを保つ方法をいろいろと試してきた。定番は患者サポート用のウェブサイトで、患者はかかりつけ医の指導の有無にかかわらずサイトを利用することができる。

 

最近では、スマートフォンの普及に伴い、いくつかの意欲的な企業が服薬時刻のアラームや治療に関連する情報を提供する専用のモバイルアプリを試作した。しかし、実際のところ、ほとんどの患者は、薬剤ごと、あるいは企業ごとに用意されたアプリをいくつも使いたいとは思っていない。

 

製薬企業と患者の橋渡しを目指したモバイルアプリは、ごくわずかな成功例を除いて、ほとんどが失敗に終わっている。テキストメッセージを送るという試みもあったが、そのほとんどは非常に使いにくく、送信可能なデータやメディアの面でも制限があった。

 

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患者とのつながり強めるツールに

さて、先ほど紹介したインドの映画会社と同じようなサービスが患者のケアに組み込まれたと想像してみよう。

 

ある患者が来院すると、医師は製薬企業が直接提供するサポートサービスへの参加登録を勧める。医師は患者の参加登録を手伝ったり、登録のためのQRコードや電話番号が載った資料を渡したりする。患者が処方箋の詳細を知らせると、服用を促すアラームが、関連する情報や症状管理のヒントなどとともに送信される。各サービスの開始や停止に必要なキーワードも送られる。次回の調剤に使えるクーポンのようなインセンティブと引き換えに、患者が時間通りに服薬したことを確認することもできるだろう。

 

メッセージアプリを使ったサービスは患者にとって、自分で主体的に利用できるし、スマホの容量を圧迫するだけでほとんど使わないようなアプリをインストールしないで済む、という利点がある。

 

もちろん、フェイクニュースに見られるフェイスブックの弱点を考えると、その傘下のプラットフォームで医療情報をやり取りすることに患者が抵抗を覚える可能性はある。

 

Telecommunication Digital Device Networking Concept

 

特に米国では、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)を守ることのほうが、製薬企業にとっては大きな課題だ。WhatsAppは高度な暗号化をうたってはいるが、クラウドへのメッセージの保存には脆弱性の問題がある。

 

HIPAAはアクセスの保護も必要としており、メッセージだけでなくメッセージがあるという通知でも、何らかのパスワード認証による本人確認を受け取れないアプリケーションにしなければならない。WhatsAppにはまだこういった条件は揃ってはいないが、デバイス自体の設定でクリアできるだろう。

 

製薬会社が率先してこうした課題を解決すれば、WhatsAppのようなメッセージプラットフォームは、患者とのつながりを強めるための強力なツールであることが実証され、患者が日常的に使うアプリを介して製薬企業と患者がつながるようになると考えられる。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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