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海外レポート

トランプ大統領が発表した薬価引き下げ策の影響は?|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、米国のトランプ大統領が先日発表した薬価の引き下げ策を取り上げます。医療政策を専門とするアナリストが影響を探りました。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

実際の価格に与える影響は大きくない

5月11日、米国のドナルド・トランプ大統領が薬価の設定をめぐる政府のプランの概略を発表した。プランは長大な政策のリストとなっており、上昇し続ける薬価をカットするというのが謳い文句だ。

 

薬価の引き下げは大見出しで強い言葉で語られている一方、このプランが実際の価格に与える影響はさほど大きくないとみられている。

 

トランプ政権が「米国患者第一」と銘打ったこのプランは、一部の薬剤をメディケアの「パートB」から「パートD」に移す可能性に言及しており、この点は大きな変化となり得る。今回の発表では具体的にどんな薬が移動の対象になるのかは明らかにされていないが、パートBの薬剤には非常に高価なものも多く、パートDに移されるとなると、メディケア受給者は高額な薬剤の分も負担しなければならないという憂き目に遭うことになるかもしれない。

 

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このプランがどう実行されていくのか、予測するのは簡単だ。大統領令と行政規則で実施可能なものは難なく実行に移されるだろう。一方、議会の承認を必要とするものは、選挙の年に超党派で連携するという難事がなされない限り、実現の望みは薄い

 

製薬業界が警戒していたメディケアとの直接交渉は回避

アレックス・アザール保健福祉省長官は、薬のテレビコマーシャルで価格を表示するよう、早急に製薬会社に求めていくと述べた。これはおそらく卸売価格のことであり、実質的にはリストプライス、あるいは保険の適用なしに支払う場合の価格だ。ただし、どんな薬にもリベートやディスカウントの交渉はつきものである。保険加入者にとっては、コマーシャルで見る価格に大した意味はない

 

アザール氏は、民間部門に新たな交渉ルートが開かれ、それがメディケアの各部門にも波及する可能性があると称賛するが、詳細については言及していない。メディケア・アドバンテージとパートDプランでは、すでに価格交渉を行っている。リベートを価格に反映させることは、患者にとって直接的かつ経済的な助けになる。

 

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しかし、トランプ大統領の提案は、製薬企業が最も警戒していたこと、すなわちメディケアが直接、製薬企業と価格交渉を行うことは企図していない。世界最大の薬剤購入者であるメディケアは、医療政策にも大きな影響力を持っており、その交渉力は計り知れない。今回の提案は製薬企業との衝突を回避した内容となっている。直接交渉には議会の承認が必要で、実現は不可能ではないものの難しいだろう。

 

外国への値上げ要求 貿易圧力を行使か

今回の提案には、比較的簡単に実行できる施策もある。

 

薬剤師がより安価な医薬品の使用を推奨するのを縛るルールの廃止は、直ちに効果が期待できる上、道理にもかなっている。コネチカットやジョージア、ノースカロライナ、ノースダコタといったいくつかの州では、すでに関連法が制定されている。ほかの州でも超党派で強力に推進されるはずだ。

 

医療制度と薬剤給付管理会社(PBM)が一体化することで、大規模な独立型PBMの時代が終焉の危機にある今、価格へのリベートの反映は取り組みやすい課題になっている。大統領の演説で標的にされた中間業者は、より大きな事業体の一部になっている、あるいはなりつつあり、従来のような独立性を失っているからだ。

 

The White House

 

外国の「ただ乗り」を批判

トランプ大統領はさらに、諸外国は(彼の言葉を借りれば)「グローバルなただ乗り」をしており、医薬品に支払う額が米国よりもずっと少ないとの批判を繰り広げた。「米国の薬を安くし、その分を欧州に支払わせる」のがトランプ大統領の目論見だ。

 

米国は他国に対して医薬品の値上げを強要できるのだろうか。大統領はこれを行うため、別の貿易圧力の行使を考えているようだ。米国通商代表部のロバート・ライトハイザー代表はこれを押し進めるだろうが、反発が予想される。たとえ米国が他国から譲歩を引き出せたとしても、欧州やカナダで薬が高くなったからといって、米国の患者が薬局で支払う額が変わることはないだろう。

 

つまるところ、こうした政策が実行に移されるとしても、その評価は現時点ではなく、患者の実際の支払いにどう影響するかで決まるということだ。

 

(原文公開日:2018年5月11日)

 

【AnswersNews編集長の目】

大統領就任前から薬価の引き下げに意欲を見せてきたトランプ氏。大統領選では、メディケアと製薬企業の価格交渉を解禁するなどして薬価を大幅に引き下げるなどと主張してきましたが、今回発表された政策にはこうした点は盛り込まれず、小幅にとどまったとの見方が大勢です。

 

日本に直接的に影響しそうなのが、米国で開発された医薬品に対する価格抑制をやめるよう圧力をかけるとした点です。

 

2018年度の薬価制度改革では、新薬創出加算の要件が大きく見直され、対象品目の数が大幅に減少しました。見直しの議論の過程では、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が「改革案が実現すれば日本は米国などイノベーションを重視する国にタダ乗りすることになる」と批判。米通商代表部が先月公表した2018年の「スペシャル301条報告書」(知的財産の保護に関する年次報告書)では、こうした日本の制度変更に対する懸念が示されました。

 

米国はすでに日米経済対話などを通じて日本政府に薬価政策の透明性確保を求めています。日本では米国からの要望は「内政干渉」との反発も強く、トランプ政権が今後どのような手で圧力をかけてくるのか、注目されます。

 

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