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海外レポート

2018年 治療の大きな進歩が見込まれる6つの難病・希少疾患(1)|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは難病・希少疾患の治療薬開発。今年、治療が大きく進歩しそうな6つの疾患を2回に分けて紹介します。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

ATTRアミロイドーシス

【主なプレイヤー】
ファイザー、イオニス、アルナイラム

 

【疾患の概要】
アミロイドーシスは、臓器や組織でタンパク質が凝集し、何らかの理由で正しくフォールディング(タンパク質が立体構造に折りたたまれる減少)されなかった(これをミスフォールディングという)タンパク質の毒性蓄積によって特徴づけられる。アミロイドーシスのサブタイプは、関連する前駆タンパク質によって定義されており、アミロイド軽鎖(AL)、アミロイドA(AA)、アミロイド・トランスサイレチン(ATTR)などがある。

 

現在、製薬企業が力を入れているATTRアミロイドーシスは、「野生型トランスサイレチン(TTR)」と「変異型TTR」の2つの遺伝子型に分かれている。

 

野生型TTRの沈着は、心臓を硬く、厚くする可能性があり、その結果、時間とともに心筋症を引き起こす。

 

変異型TTRを有する患者は、多発性ニューロパチーと心筋症のいずれかまたは両方を発症する可能性がある。ATTRアミロイドーシス患者の生存率は、TTR遺伝子型と、結果として引き起こされる心筋症/多発性ニューロパチーの重症度によって、月単位から年単位で大きく変化する。

 

【現在の治療とアンメットニーズ】
ファイザーの「ビンダゲル」(タファミジス)などのTTR安定化薬や、アミロイドディグレーダー(ドキシサイクリン/タウロウルソデオキシコール酸など)が、TTRの構造を維持し、臓器に蓄積したTTRアミロイドを取り除くために処方される。しかし、医師はより有効な治療法が必要だと主張している。現時点では、肝移植だけが唯一、凝集したTTRタンパク質の発生源を除去できる治療法だ。

 

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【期待される治療の進歩】
イオニスのアンチセンスオリゴヌクレオチドinotersenと、アルナイラムの低分子干渉RNAであるpatisiranによるRNA翻訳抑制治療にブレークスルーの兆しが見える。

 

米FDA(食品医薬品局)による承認の可否の判断は2018年第3四半期(7~9月)になると予想されている。inotersenとpatisiranは、TTRメッセンジャーRNAと結合して、その発現を抑制し、TTRタンパク質の産生を減らす。

 

これまでの臨床試験の結果からは、低分子干渉RNAとアンチセンスオリゴヌクレオチドが、TTRタンパク質の産生を減らす有力なアプローチであること、また、修正ニューロパチー障害スコア(mNIS+7)を有意に改善したことが示されている。

 

臨床試験の結果によると、inotersenはmNIS+7の改善でプラセボを34ポイント上回り、patisiran(プラセボとの差は20ポイント)よりも高い値を示した。さらに、安全性の面でも今のところinotersenがリードしている。

 

どちらの治療が選ばれるかはともかく、これらの薬剤が登場すれば、ATTRで苦しむ患者に治療の変革をもたらすだろう。

 

遺伝性血管性浮腫

【主なプレイヤー】
CSLベーリング、シャイアー、ファーミングヘルスケア

 

【疾患の概要】
遺伝性血管性浮腫(HAE)は、C1インヒビター(C1-INH)タンパクをコードする遺伝子の変異による常染色体優性遺伝疾患。C1-INHの異常がもたらす血管拡張作用性物質ブラジキニンの上昇により、皮下もしくは粘膜下組織に再発性腫脹があらわれる。

 

急性HAE発作は、顔やのど、手、足、腹など体のさまざまな部位に影響を及ぼす。さらに、HSE患者では障害と死亡のリスクが増加することが分かっている。

 

【現在の治療とアンメットニーズ】
血漿由来のC1-INH(CSLベーリングの「Berinert」「Haegarda」、シャイアーの「Cinryze」)のほか、いずれもシャイアーの「Firazyr」(イカチバント)と「Kalbitor」(エカランチド)、そしてファーミングヘルスケアの組換えヒトC1-INH「Ruconest」などがある。これらの薬剤は効果的な症状の管理を可能とし、患者の嗜好に合わせて柔軟に薬剤を選択することができる。

 

専門家らは、これらの薬剤へのタイムリーなアクセスが、HAE患者の外来受診と入院を大きく軽減してきたと報告している。一方で、将来の合併症の発生を減らすには、管理よりも発作の予防が必要だと主張している。

 

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【期待される治療の進歩】
シャイアーのラナデルマブ(SHP643)は完全ヒト型モノクローナル抗体で、血管性浮腫の進行でカギとなる役割を果たす血漿カリクレインを阻害する。

 

これまでの臨床データからは、ラナデルマブがHAEの発作を減らすのに非常に有効であることが示されている。臨床試験では、ラナデルマブを隔週で投与することにより、発作がひと月あたり87%低下。これは、現在利用できる予防薬(例えばCinryzeなど)よりも治療が改善されること、そして、多量の薬剤を頻繁に点滴しなければならなかった第一世代のC1-INH療法のような投与の負担が減ることを示している。

 

米FDAは2018年2月、ラナデルマブの承認申請を受理しており、承認の判断は18年8月に予定されている。EMA(欧州医薬品庁)も18年2月に迅速審査を認めた。早ければ18年9月に欧州でラナデルマブが使えるようになる。

 

ラナデルマブについては、ほとんどすべての臨床パラメーターでHAE患者にとって優れたオプションとなりそうだ。

 

免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)

【主なプレイヤー】
ロシュ、リゲル

 

【疾患の概要】
免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、ITP)は、血液凝固に重要な血小板が破壊されたり、産生が減少したりする血液疾患だ。後天的な自己免疫異常と考えられている一方、遺伝が発症と何らかの関わりがあるのではないかとも考えられており、この点についてははっきりとわかっていない。

 

ITPは、3カ月以内に回復する「急性型」と、1年以上続く「慢性型」に区分される(編集者注:日本の難病支援センターのホームページによると、急性型は6カ月以内、慢性型は6カ月以上と定義されている)。

 

【現在の治療とアンメットニーズ】
急性ITPの治療は、副腎皮質ステロイド、または免疫グロブリンという、長年にわたって柱となっている2つの方法のいずれかで開始される。

 

これらの治療が成功せず、ITPが慢性化した場合、医師は第二選択肢の治療を行う。ここには、トロンボポエチン受容体作動薬や抗CD20抗体リツキシマブ(ロシュの「リツキサン」)を含む場合もある。もう1つの治療選択肢として脾臓摘出術があるが、これはトロンボポエチン受容体作動薬が登場して以来、行われることは少なくなっている。

 

ただ、患者の血小板反応を改善する新たな薬剤に対するニーズは満たされていない。

 

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【期待される治療の進歩】
リゲルのフォスタマチニブはSyk酵素の選択的阻害薬で、2本の臨床第3相試験で慢性ITP患者に対する効果が検証された。

 

フォスタマチニブの2つの重要な試験の統合解析によると、同剤がプラセボに比べ、安定した血小板反応に達している患者の比率を有意に上昇させることが示唆された。

 

これらの結果に基づき、リゲルは2017年にFDAに承認申請を行った。FDAによる判断は18年4月とみられている。

 

(原文公開日:2018年3月1日)

 

【AnswersNews編集長の目】

医学研究や科学技術の発展を背景に、増加を続ける難病や希少疾患に対する医薬品。米FDAのまとめによると、2017年に米国で承認されたオーファンドラッグは18剤で、同年に承認された新薬46剤の4割を占めました。

 

製薬企業側もこの分野への取り組みを強めています。研究や技術の進歩に加え、市場が細分化されており競合が少なく、開発助成を受けられたり、高い薬価が付きやすかったりといった点も製薬会社にとって魅力です。

 

少し古いデータになりますが、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が2016年に発表したレポートによると、米国で開発中のオーファンドラッグは560種類にも上ります。最も多いのは希少がん(希少血液がんを含め233種類)で、次いで嚢胞性線維症や脊髄性筋萎縮症などの遺伝性疾患(148種類)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経性疾患(38種類)と続きました。

 

世の中には約3万種類の病気が存在すると言われていますが、そのうち治療手段があるのはほんの一握りに過ぎません。オーファンドラッグへの取り組みは、今後も加速していくでしょう。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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