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アマゾンのヘルスケア会社設立が意味すること|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。米アマゾンが1月30日、JPモルガン・チェース、バークシャー・ハザウェイとともに、ヘルスケアサービスを提供する会社を設立すると発表しました。薬局への参入が噂されるアマゾンですが、新会社で何をしようとしているのでしょうか。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

ビジネス界の巨人が結集 医療界に挑戦

さながらビジネス界のヒーロー映画のようだ。

 

「利益追及のインセンティブや制約のない」新しいヘルスケア会社をつくろうと、ジェフ・ベゾス(アマゾンCEO)、ジェームズ・ダイモン(JPモルガン・チェースCEO)、ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハザウェイCEO)という大物3人が結集した。

 

1月30日、アマゾンとJPモルガン、バークシャーの3社がヘルスケア会社の設立を発表した。米国医療の現状打破を狙った団結では(今のところ)ないにしろ、3社があえて詳細を濁した発表によれば、3社は110万人の従業員とその家族向けにテクノロジーを基盤としたヘルスケアサービスを提供するために協力することになる。

 

Healthcare Wellness Wellbeing First Aid Box Word Graphic

 

これら巨大企業が目指すのは、短期的で些細な変化ではない。大手保険会社や製薬会社がナーバスになっているのはこのためだ。

 

結局、3社のコラボレーションは、資金力と眼識、そしてアマゾンの技術力にものを言わせて、既存の保険会社や薬剤給付管理会社にとって代わり、中間マージンを削り、薬剤価格の不当な吊り上げに歯止めをかけ、臨床プロトコルと治療アルゴリズムをより効果的に使い、テクノロジーに裏打ちされた家庭向けのヘルスケアサービスを最大限活用する、ということだろう。

 

「医療費は米国経済を蝕む寄生虫」

膨張を続ける医療費は、米国経済を蝕む寄生虫のようなものだ。われわれ3社が、この問題に対する答えを出せるわけではない。だが、われわれはそれを避けることのできない問題だからと受け入れることもしない。むしろ、我が国の最高の人材が蓄積してきた資源を投入することで、やがては医療費の上昇を食い止め、同時に患者満足度と治療成績を改善することができるという、共通の信念を持っている」

 

バークシャーのバフェットCEOはこうコメントしている。医療費を寄生虫に例えるとは恐れ入るが、これはベゾス(技術者)とバフェット(投資家)、そしてダイモン(銀行家)という3人の力を知らしめるには打ってつけの言葉だ。

 

Pills and bottle on hundred dollar bills, medicine and health care cost concept

 

その力というのは、ユナイテッドヘルスやCVSといったこの分野の有力企業に挑戦し得るようなやり方で、ヘルスケア企業と科学技術を一体化させていく力だ。新会社のチームには、バフェットが厚い信頼を寄せる投資コンサルタントのトッド・クームスや、以前ノバルティスでM&Aを取り仕切っていたJPモルガンのマーベル・サリバン・ベルヒトルトがいる。

 

アマゾンの薬局参入とは無関係?

アマゾンはここ数年、薬局への進出を探っている。投資会社Leerinkのレポートによれば、30~40人のチームを編成して薬局への参入に向けた業務を行っているようだ。すでに米国の12州で薬局の開設許可を取得しており、エクスプレス・スクリプツなどのPBM(薬剤給付管理会社)を買収するのに問題はない。

 

さらにアマゾンは、2社以上の後発医薬品企業と対話をし、医療プライバシーや調剤、医療提供モデルといった分野で専門家を雇っているとの報告もある。

 

バークシャー、JPモルガンとの新会社設立は、こうした動きとは無関係と考えられる。ただ、ベゾスと彼のチームは、医薬品の価格設定・供給の複雑なシステム、保険業界、不当なインセンティブが米国の医療を世界一高いものにしているということを学んできた。新会社設立も、これを踏まえてのことだろう。

 

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アマゾンが、後発医薬品と医療用品の販売・流通だけをもくろんでいるとすれば、もうとっくにやっているはずだ。アマゾンは、患者の退院後、病院が出した処方薬や医療用品、モニター装置を数時間以内で家まで届ける、といった将来を構想しているかもしれない。

 

アマゾンが開発したAIアシスタント「アレクサ」は、質問に答える、薬の服用を思い出させる、あるいは遠隔医療ナースに電話をする、といったことができる。療養食を患者宅の玄関先まで配達することも可能だろう。

 

米国医療制度の課題は解決するのか

高らかにファンファーレを響かせたいところだが、3社のコラボレーションは長期的なプロジェクトだ。また、ヘルスケア業界ではすでに、ユナイテッドヘルスがOptumと医療提供者の統合を進めているし、CVSはエトナを買収すると発表した。保険者―医療提供者―供給元の垂直統合が進みつつあり、後発品メーカーを傘下に収めようと計画する病院共同事業体もある。

 

ベゾスとバフェット、ダイモンという3人の著名な資本家は、現行の米国の医療制度はビジネスの大きな障害になっていると考えており、彼らは医療をめぐる国民的議論を巻き起こす政治的な影響力も持っている。バフェットは、政府が出資する全国民向けの医療が最善かつ最小コストの選択肢になると発言している。

 

米国の医療制度の欠点と過度なコストの問題が、この国で最も裕福で、賢明で、革新的な資本家によって修正されるのかどうか。このトリオからは、これからも目が離せない。

 

(原文公開日:2018年2月1日)

 

【AnswersNews編集長の目】

世界的にも大きな注目を集めている、アマゾンなど3社によるヘルスケア会社の設立。新会社の具体的な事業内容や規模は未定ですが、まずは3社の従業員向けに、テクノロジーを通じて低コストかつ簡素で高品質な、透明性の高いヘルスケアを提供することを目指します。

 

アマゾンのジェス・ベゾスCEOは「難しいことかもしれないが、医療にかかる経済的負担を軽減すると同時に、従業員とその家族の治療成果を向上させることは価値がある。これを成功させるためには、有能な専門家と初心者の心。そして長期的な方向づけが必要だ」とコメントしています。

 

以前から処方薬販売などヘルスケア分野への進出を狙っていると伝えられていただけに、新会社設立に意外感はありません。一方、3社が新会社設立を発表した30日には米株式市場でヘルスケア関連株が軒並み値を下げました。アマゾンの進出を受けて立つヘルスケア業界には警戒感が広がります。

 

3社による今回のヘルスケア企業設立は、高すぎると言われる米国の医療にとって転機となるのでしょうか。少なくとも、議論を巻き起こすことは間違いありません。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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