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ニュース解説

MRによる医薬品のプロモーションに公的規制?厚労省が検討を開始

厚生労働省が、製薬企業のMRが行う医薬品のプロモーションに、公的な規制を設けるための検討に乗り出しました。

 

厚労省が行った調査によると、全国のモニター医療機関から「問題があるのではないか」と報告が寄せられたプロモーションは、わずか3カ月間で39医薬品64事例に上りました。中には、副作用を逆手にとって効能効果としてPRした事例や、他社品との差別化のために臨床データのない効能効果を紹介した事例も。厚労省の審議会では、医療従事者らから規制強化を求める意見が相次ぎました。

 

副作用を効果としてPR、グラフいじり効果誇張…

厚生労働省は11月15日に開いた厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会で、製薬企業のMRらが行う医薬品の情報提供を適正化するための方策について検討を始めました。この日の部会では、MRが使うプロモーション資材に対する規制や、医薬品医療機器等法による広告規制の見直しを求める意見が相次ぎました。厚労省は、海外の事例も調べた上で対策の検討を進める方針です。

 

ARB「ディオバン」(ノバルティスファーマ)や同「ブロプレス」(武田薬品工業)などで不適切なプロモーション活動が発覚したことを受け、厚労省は2016年度から、MRやMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)によるプロモーションを対象とした“覆面調査”を開始。全国のモニター医療機関から問題がありそうな事例を報告してもらったところ、その数は調査期間の3カ月間で39医薬品64事例に上りました。このうち23医薬品は、行政指導が必要な事例だったといいます。

医療機関から「問題がありそう」と報告されたプロモーション

 64事例の内訳を見てみると、最も多かったのは「事実誤認の恐れのある表現」(45.3%)で、「誇大な表現」(20.3%)、「承認範囲を超える表現」(14.1%)、「効能効果や安全性を保証する表現」(6.3%)と続きました。具体的には、

▼副作用を効能効果としてPR【高リン血症治療薬、MRによる口頭説明】
▼本来の用法用量とは異なる用量を推奨【抗リウマチ薬、医療関係者向け情報提供サイトでの企業配信動画】
▼他社製品との差別化のために臨床データのない効能効果を紹介【統合失調症治療薬、MRによるプレゼンテーション(口頭説明・スライド)】
▼グラフの縦軸の間隔を伸ばして効果を強調【気管支拡張薬、製薬企業主催のWebセミナーの図表】

といった事例が報告されました。

 

自作スライドや口頭説明「現行規制では対応難しい」

医療用医薬品のプロモーションをめぐっては、虚偽広告や誇大広告を禁じた医薬品医療機器等法(薬機法)や、一般向け広告の禁止や他社製品の誹謗広告の制限などを定めた厚労省の「医薬品等適正広告基準」といった公的な規制が設けられています。

 

しかしこれらは、企業が組織的に作成したプロモーション資材を対象としており、「個別のMRによる自主作成スライドや口頭説明は、現行の広告規制などでは対応が難しい」(厚労省)といいます。

医薬品の広告に関する公的な規制

 日本製薬工業協会(製薬協)も自主基準として「医療用医薬品プロモーションコード」を定めており、承認範囲内での公平な情報提供などを求めていますが、厚労省の調査結果を見る限り、順守されているとは言い難いのが現状です。

 

製薬協は毎年11月を「コード理解促進月間」として啓発に務めていますが、17年もバイエル薬品で社員が関与した論文をもとに抗凝固薬「イグザレルト」の情報提供活動を行っていたことが発覚。不適切なプロモーションはなくなりません。

製薬協の医療用医薬品プロモーションコード(抜粋)

 

情報提供 萎縮懸念も

厚労省は今後、ガイドラインの策定なども視野に対策を検討する方針ですが、規制によって医薬品に関する有用な情報が医療現場に届きにくくなることを懸念する声も聞かれます。

 

厚労省の研究班が米国の事例を調べたところ、FDA(食品医薬品局)による医学系学会でのプロモーション監視活動を警戒した製薬企業が、プロモーション活動を自粛してしまうといった事態も発生。このためFDAは学会での監視活動を見直し、企業がスポンサーとなるシンポジウムやセミナー、企業ブースを見回る監視型の活動から、企業ブースの隣にFDAがブースを出すなど、啓発型の活動に切り替えているといいます。

 

製薬企業によるプロモーション活動が医薬品の処方に大きな影響を与えているのは事実。不適切な情報が提供された場合でも、必要な情報が医療現場に伝わらなかった場合でも、最終的に不利益を被るのは患者です。有用な情報の伝達は確保しつつ、不適切な情報提供を防ぐためにはどうすればいいのか。バランスのとれた、実効性のある対策が求められています。

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