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厳しさ増す?製薬企業と厚労省の薬価交渉―「イストダックス」「パルモディア」異例の連続収載見送り

これも、薬価への抑制圧力が高まっていることの表れなのでしょうか。

 

今年7月に承認された抗がん剤「イストダックス」と高脂血症治療薬「パルモディア」が、8月、11月と2回続けて薬価収載が見送られるという異例の事態となっています。いずれも、厚生労働省との間で薬価が合意に至っていないのが理由。製薬会社と厚労省の薬価交渉は厳しさを増しているようです。

 

薬剤の価値めぐり溝

「日本の当局に価値提案を行っており、それを実現しようとしている。できるだけ早くイストダックスを患者に届けたい」

 

10月、来日に合わせて記者会見した米セルジーンのマーク・J・アレスCEOは、7月に承認を取得し、薬価収載が見送りとなっている抗がん剤「イストダックス」(一般名・ロミデプシン)の薬価収載に向け、厚生労働省に薬剤の価値を理解してもらうべく努力を続けていると強調しました。

 

イストダックスは末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)という希少な血液がんに対する治療薬。希少疾病用医薬品に指定されています。本来なら9月に薬価収載される予定でしたが、希少疾病に対する薬剤の価値をめぐり、厚労省と認識が一致せず、見送りに。その後も両者の溝は埋まらなかったようで、11月の薬価収載も見送られることになりました。

 

既存薬との違い どう評価

イストダックスと同様に、7月に承認を取得たにもかかわらず、8月、11月と2回続けて薬価収載が見送りとなっている新薬がもう1つあります。興和の高脂血症治療薬「パルモディア」(ペマフィブラート)です。

 

パルモディアは、興和が高脂血症治療薬「リバロ」に続く主力品として大型化を目指している新薬。従来のフィブラート系薬剤と比べて活性と選択性が高いとされ、原則禁忌となっているスタチンとの併用も忍容性が高いことなどが特徴。こうした既存薬との違いをどう評価するかが、薬価交渉でもポイントになっているとみられます。

 

パルモディアの承認の可否を審議した今年6月9日の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会の議事録にはこんなやりとりが残されています。

 

委員:「フィブラート系薬剤ですでに承認されているものがいくつかあるが、既存の薬剤との差別化は何が考えられるか」

医薬品医療機器総合機構(PMDA):「審査した結果としては既存薬と同等という判断。申請者としては、腎臓や肝臓に対して優しい薬である、より安全に使える薬であるということを前面に押し出して申請しているが、試験結果を見ると、そこまでの結果ではなかったので、同等の薬という位置付けになると思う」

 

ただ、パルモディアを大型製品に育てたい興和にも、おいそれと引き下がれない事情があります。興和は適応拡大も含め、国内でピーク時に700億円規模の売り上げを目指すと意気込んでおり、厳しい交渉は続きます。

 

過去には「シダトレン」「カドサイラ」なども

企業と厚労省で薬価が折り合わず、薬価収載が見送られたケースは過去にもあります。

 

スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬として14年1月に国内で初めて承認された鳥居薬品の「シダトレン」は当初、14年5月に薬価収載される予定でしたが、実際の収載は9月にずれ込みました。国内初の抗体薬物複合体となった中外製薬の「カドサイラ」(13年9月承認)も、直後の11月の収載を見送り、翌年の4月に薬価収載されました。

製薬企業が薬価収載を見送った医薬品の例 「シダキュア」舌下免疫療法薬・鳥居薬品 「イストダックス」抗がん剤・セルジーン 「パルモディア」高脂血症治療薬・興和 「トルツ」乾癬治療薬・イーライリリー 「シダトレン」舌下免疫療法薬・鳥居製薬 「カドサイラ」抗がん剤・中外製薬 「ビクトーザ」糖尿病治療薬・ノボノルディスク

 記憶に新しいのは、昨年発売された日本イーライリリーの乾癬治療薬「トルツ」でしょう。類薬より薬価が高くなり、厚労省が価格の安い類薬の使用を優先することを検討したのを理由に、同社は一旦、薬価収載の申請を取り下げ。これにより16年8月の収載は見送られ、11月に薬価を算定し直して収載されましたが、薬価に対する風当たりの強さを印象付ける出来事となりました。

 

ビジネス判断としては理解できるものの…

新薬の薬価算定は、承認取得後に企業が薬価収載を厚労省に申請し、中央社会保険医療協議会の薬価算定組織が薬価を算定する、というプロセスで進みます。薬価算定組織の算定案に不服がある場合は、製薬企業がそれを申し立てることも認められており、こうした場合には薬価算定組織が算定案を検討。ここで両者が折り合えば中医協での審議を経て薬価収載となりますが、そうでなければ企業側が薬価収載を見送るという判断もありです。

薬価算定の流れ

 製薬企業にとって薬価は製品の売り上げを左右する重要な要素。新薬の開発には莫大な費用がかかっているだけに、納得いく薬価が得られないとなれば発売を先送りするのもビジネス上の判断としては理解できます。

 

ただ、新薬の薬価収載は年4回しかなく、1回見送れば発売が3カ月遅れます。次の薬価収載は18年4月(18年は薬価改定の年にあたるため、通常なら2月の薬価収載が改定後の4月に先送りとなる)で、仮にここで収載となっても、当初の予定からは半年以上もずれ込むことになります。新薬を待っている患者の存在も考えると、企業の戦略で発売が遅れるのは好ましい状況ではありません。

 

薬価に対する風当たりが強くなる中、新薬の薬価をめぐる製薬企業と厚労省の協議も今後、よりシビアになっていく可能性があります。算定方式にばかりフォーカスが当たる薬価制度改革の議論ですが、そのプロセスにも目を向けていく必要がありそうです。

 

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