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抗肥満薬 市場に新展開は起こるのか?製薬大手 高まる関心|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは抗肥満薬。2012年以降、米FDAが承認のハードルを下げたことで複数の薬剤が市場に登場。肥満への効果が期待される糖尿病治療薬を持つ大手製薬企業が、この領域への関心を高めています。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

選択肢は拡大したが治療率は上がらぬまま

多くの人が肥満に悩んでいるにもかかわらず、抗肥満薬による治療率はなかなか上がらない。

 

Decision Resources Groupの疫学調査によると、G7(米国、フランス、ドイツ、スペイン、英国、イタリア、日本)で肥満・過体重で抗肥満薬による治療を受けている人は2016年現在でわずか3%にとどまっている。これは、償還の難しさや安全性への懸念、抗肥満薬に対する医師や患者の認知度の低さによるものだろう。

 

米国では2012年まで、体重減少目的で使用可能な薬剤としては、ロシュの「Xenical」とphentermineのジェネリックしかなかった。しかし、12~16年に多くの抗肥満薬が欧米で承認され、米国ではエーザイの「Belviq」とヴィーバスの「Qsymia」、オレキシジェンの
「Contrave」、そしてノボノルディスクの「Saxenda」が発売。欧州でもSaxendaと「MySimba」(米国製品名・Contrave)が販売を開始している。

 

しかし、現在使用可能な薬剤の体重減少効果は限定的で、安全性にも課題が残る。後期のパイプラインも希薄で、臨床第3相(P3)試験段階にあるのは、ジョンソン&ジョンソンのカナグリフロジン/phentermine配合剤だけだ(田辺三菱製薬の発表によると、その後ジョンソン&ジョンソンは肥満を対象としたカナグリフロジン/phentermineの開発を中止)

 

fat man use scale to measure his waistline

 

ノボノルディスクが積極投資

アンメットニーズは大きく、治療を要する患者が多いにもかかわらず、多くの大手製薬企業は抗肥満薬への研究開発投資を控えていた。

 

ところが、ノボノルディスは異なる路線をとり、フランスと日本を除く主要市場でSaxendaを発売している(15年米国発売、16年欧州発売)。SaxendaはGLP-1受容体作動薬リラグルチドの高用量製剤。当初は「ビクトーザ」として2型糖尿病を対象に販売されていた。ノボによると、Saxendaの米国での市場シェアは35%に達しているという。

 

同社は肥満領域で主導的地域を確立したいと考えており、抗肥満薬の研究開発に相当な投資をしている。作用機序の異なる7つの新規化合物を持っており、肥満に対する開発初期段階のパイプラインでは他社を圧倒している(同社の化合物リストは下表を参照)。

 

糖尿病と肥満は表裏一体

主な新薬候補で開発中止が相次いだこともあり、抗肥満薬の評判は芳しくない。リスクが高いと判断した製薬大手はこれまで開発を避けてきた

 

製薬各社は現在、糖尿病治療薬から末梢性に作用する抗肥満薬を開発することで、かつて開発中止につながった中枢神経系の作用を避けることを目指している。Saxendaの発売は、糖尿病のポートフォリオを肥満にも広げていくという比較的リスクの低い戦略へと製薬大手を駆り立てた。ジョンソン&ジョンソンやアストラゼネカ、ノバルティス、サノフィは、すでに糖尿病のポートフォリオを持っている。

 

各社の狙いは、2型糖尿病と肥満の強い関連性を活用することにある。これらの企業はすでに、糖尿病治療薬を内分泌専門医に販売する体制も持っている。うまくいけば、抗肥満薬の販売に追加の投資は必要ないかもしれない。

 

 

J&Jの低リスク戦略

ジョンソン&ジョンソンは、抗肥満薬市場への参入にあたって、新規化合物には投資しないという低リスクの戦略をとっている。同社はカナグリフロジンとphentermineの配合剤を開発するという、ある意味では慎重な動きを見せているが、これはノボがSaxendaで、ヴィーバスがQsymiaでとった戦略のあわせ技と言える。

 

つまり、自社の糖尿病治療薬の適応を肥満にも広げるノボの方法と、もっとも使われている抗肥満薬であるphentermineのジェネリックと別の薬剤を組み合わせるヴィーバスの策を踏襲したものだ。

 

態度を軟化させたFDA

2012年まで米FDAはいくつもの抗肥満薬候補を差し戻しており、この種の薬が承認を得るのは難しかった。しかしその後、FDAは抗肥満薬の承認に対する態度を軟化。FDAが近年、複数の薬を承認したことは、製薬企業にとって抗肥満薬市場進出へのゴーサインとなるだろう。

 

製薬大手が抗肥満薬への投資を増やせば、アンメットニーズを満たす可能性は高まりそうだ。2025年までの発売が予測されるsemaglutide(ノボ)などにより、抗肥満薬市場は拡大に向かっていくだろう。

海外レポート|抗肥満薬

 

(原文公開日:2017年6月27日)

 

【AnswersNews編集長の目】

2012年、それまで承認に高いハードルを設けてきた米FDAが態度を変えたのを機に次々と発売された抗肥満薬。選択肢は広がったものの、なかなか普及していません。

 

日本企業で唯一、抗肥満薬を販売するエーザイの「Belviq」(13年6月米国発売)も、17年度の売上高予想は50億円にとどまります。発売当初「2020年に1000億円」を掲げていたことを考えると、市場浸透は想定よりはるかに遅れています。

 

日本国内で販売されている抗肥満薬は富士フイルムファーマの「サノレックス」(マジンドール、14年にノバルティスから製造販売承認を承継)だけです。13年には武田薬品工業が「オブリーン」(セチリスタット)が承認されましたが、臨床試験で示された体重減少効果がプラセボ比で2%にとどまったことから、中央社会保険医療協議会(中医協)で保険適用に疑問の声が続出。薬価収載は見送られ、いまだ発売には至っていません。

 

国内では塩野義製薬が、自社創製のニューロペプチドYY5受容体アンタゴニスト「S-237648」のP2試験を行っており(米国ではP1)、エーザイはBelviqのP1試験を日本で進めています。厚生労働省の2015年国民健康・栄養調査によると、肥満の割合は男性で約3割、女性で約2割ですが、新たな治療薬が登場するにはまだ時間がかかりそうです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。Decision Resources Groupは、向こう10年の肥満症治療薬市場予測レポート(Disease Landscape and Forecast – Obesity)を発行しています。レポートに関する問い合わせはこちら

 

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