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厚労省が運用を開始した医薬品の「条件付き早期承認制度」3つのポイント

更新日

厚生労働省が、医薬品の条件付き早期承認制度を導入しました。対象は、疾患の重篤性は高いものの、患者数が少なく臨床試験が難しい医薬品が対象。多くの患者を対象とした検証的臨床試験を行わずとも、発売後に有効性と安全性を再確認することを条件に承認します。

 

制度の狙いは、重篤な疾患に対して有用性が高い医薬品の早期実用化。制度のポイントをまとめました。

 

※10月20日に厚生労働省が制度の運用開始を通知したことを受け、10月19日に掲載した「厚労省が近く導入する医薬品の『条件付き早期承認制度』3つのポイント」の見出しと内容を一部修正しました。

 

【ポイント1】P3試験なしで承認が可能に

厚生労働省は10月20日、医薬品の条件付き早期承認制度の運用を開始しました。この制度は、今年1月に開かれた「薬事に関するハイレベル官民政策対話」で厚生労働省と製薬業界団体が導入に合意したもの。9月の薬事・食品衛生審議会薬事分科会で制度案が示され、10月の「革新的医薬品創出のための官民対話」で加藤勝信厚生労働相が月内にも導入する考えを表明していました。

 

条件付き早期承認制度は、重篤で有効な治療法が少ない疾患に対する医薬品について、多くの患者を対象とした臨床第3相(P3)試験などの検証的臨床試験を行わなくても、一定の条件を付けた上で承認する制度です。

 

検証的臨床試験以外の臨床試験(P2試験など探索的臨床試験や非臨床試験など)で一定の有効性・安全性が確認された場合、発売後にデータを収集し、検証することを条件に承認。すでに制度としてある優先審査の対象品目として扱うことで、審査期間も短縮されます。

 

制度が適用された医薬品は、P3試験を行わなくて済むため短期間で申請にこぎ着けられ、優先審査により申請から承認までの期間も短くなります。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の業務報告によると、新薬が申請されてから承認までにかかる期間は、16年度の実績で通常審査品目が11.6カ月だったのに対し、優先審査品目は8.8カ月でした。

条件付き早期承認1-2

 厚労省は新制度の導入で、生命に重大な影響があるなど重篤な疾患に対して有用性の高い医薬品の早期実用化につなげたい考え。患者数の少ない疾患では、そもそも検証的な臨床試験を行うのが難しいケースや、症例が集まらず試験にかなりの時間を要するケースもあります。

 

再生医療では一足先に、2014年の医薬品・医療機器等法(薬機法)改正により、期限付き・条件付きで早期に承認する制度が創設されました。15年にはこの制度の下、心不全向けの「ハートシート」(テルモ)と、造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病に対する「テムセル」(JCRファーマ)が早期承認制度で承認。医療機器でも今年7月から、医薬品と同様の条件付き早期承認制度の運用が始まっています。

 

【ポイント2】発売後に有効性・安全性を再確認

新制度の対象となった医薬品は検証的な臨床試験を行わずに済む一方、発売後に得られるデータから有効性・安全性を再確認することが承認条件として課されることになります。

 

従来、条件付きで承認される医薬品には全例調査が義務付けられるケースがほとんどでしたが、今回の制度では臨床現場から得られるリアルワールドデータも活用できることとされました。国の医療情報データベース(MID-NET)や、疾患登録情報を臨床試験・臨床研究に活かそうと国が整備を進めているクリニカル・イノベーション・データベース(CIN)などの利用が想定されています。

 

ただ、
▽どういった場合にデータベースが使え、どういった場合には全例調査が必要なのか
▽承認の根拠となった探索的臨床試験のデータを踏まえた上で、市販後にはどのようなデータを収集する必要があるのか
といった点は明確にはなっていません。厚労省は制度導入にあわせて、条件付き早期承認制度下での市販後調査のあり方について、基本的考え方を示す方針です。

 

また、条件付き早期承認制度では、エビデンスが少ない状態で承認されることになります。必要に応じて、適正使用の観点から投与できる施設や医師、患者の要件を定めることを承認の条件とすることもあります。

 

【ポイント3】重篤な疾患に対する医薬品が対象

条件付き早期承認制度の対象となる医薬品は、現行の優先審査の要件である
▽重篤な疾患に対する医薬品であること
▽医療上の有用性が高い医薬品であること
に加え、
▽検証的臨床試験の実施が困難か、相当の時間がかかる
▽検証的臨床試験以外の臨床試験で一定の有効性・安全性が示される
の計4つの要件すべてに当てはまるものとなります。

条件付き早期承認2-2

具体的に条件付き早期承認制度になるかどうかは、製薬企業とPMDAが、探索的臨床試験までの結果基づいて▽制度の対象に該当するかどうか▽承認申請に必要な資料▽想定される承認条件--などについて相談。両者が「制度に該当する」ということで合意すれば、PMDAが評価報告書を作成し、企業側はこれを添えて承認申請を行います。制度の適用について薬事・食品衛生審議会で了承得られれば、PMDAが承認審査に入るという流れです。

 

PMDAは条件付き早期承認制度の導入にあわせて、制度の該当性に関する相談制度を開始する予定です。

×××

がんや希少疾患などではこれまでも、市販後に全例調査を行うことなどを条件に、P2試験までの結果で申請・承認に至るケースはありました。しかし、どういった場合にそうしたことが可能なのか、基準は明確ではありませんでした。

 

厚労省は条件付き早期承認制度で、P3試験を行わずとも承認・申請が可能な医薬品の要件や取り扱いを明確化することで、開発の道筋をクリアにし、革新的新薬の創出を後押ししたい考えです。

 

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