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ニュース解説

レブラミドで急成長 米セルジーンCEOが語った日本市場への期待と懸念

どういう状況であっても日本の市場はバイオ医薬品企業であるセルジーンにとって重要だ――。多発性骨髄腫治療薬「レブラミド」で急成長を遂げる米セルジーン。来日を機に記者会見したマーク・J・アレスCEO(写真)が語ったのは、日本市場への強い期待でした。

 

2005年の日本法人設立以降、血液がんを中心に次々と新製品を投入し、日本市場での存在感を高める同社。日本への投資はさらに拡大させていく方針ですが、薬価制度の大幅な見直しなど市場の先行きには不透明感が漂います。アレンCEOは「イノベーションと新薬へのアクセスを推進する環境になっている」と近年の日本の医薬品産業政策を持ち上げる一方、急激な政策変更にクギを刺すことも忘れませんでした。

 

「レブラミド・ポマリストで生存率上昇」

「セルジーンが日本で『レブラミド』『ポマリスト』を導入して、多発性骨髄腫の生存率はかなり上がった」。10月3日、東京都内で記者会見した米セルジーンのアレスCEOは、多発性骨髄腫の治療に大きく貢献してきたことに対する強い自負を口にしました。

 

国立がん研究センターの統計によると多発性骨髄腫患者の5年生存率は、1993~96年(診断年)の30.0%から、06~08年の36.4%まで上昇。プロテアソーム阻害薬「ベルケイド」(武田薬品工業)や、催奇形性の強いサリドマイドの構造を変え、副作用を軽減して効果を高めた免疫調整薬「レブラミド」など新薬の登場で、予後は大きく改善しました。「多発性骨髄腫の治療は劇的に変化した。奇跡的な時代だ」。アレスCEOは強調しました。

 

売上高 年平均20%成長

レブラミドの販売拡大により、セルジーンは近年、急速な成長を遂げています。

 

過去5年、同社の売上高は年平均20%伸び、16年には112億2900万ドル(16年の平均レート1ドル=108円換算で1兆2127億円)まで拡大。レブラミドは69億7400万ドル(前年比20.2%増、同7532億円)を売り上げました。ここ数年で発売した多発性骨髄腫治療薬「ポマリスト」や乾癬治療薬「オテズラ」も、短期間でブロックバスターに成長しています。

米セルジーンの売上高推移

 

売上高の40%を研究開発に投資

急成長を支えるのは、積極的な研究開発投資です。セルジーンの16年の研究開発費は44億7000万ドル(4828億円)で、売上高に占める割合は39.9%。会見で示された資料(出典・16年版EU産業研究開発投資スコアボード)によると、この割合は世界の全業種の中でもトップといいます。

 

現在パイプラインにあるのは51品目。ポートフォリオはこれまで中心だった「血液がん」から「炎症・免疫性疾患」「固形がん」にも拡大しました。▽タンパク質ホメオスタシス▽エピジェネティクス▽免疫腫瘍学▽炎症免疫学――を基盤とする最近の研究開発からは、16年、新たに8つのプログラムが臨床試験に進みました。

 

日本では現在、適応拡大を含め7つの開発プログラムが進行中しています。

セルジーンのパイプライン(日本)

レブラミドは今年3月、「再発または難治性の成人T細胞白血病リンパ腫」の適応拡大が承認されたのに続き、濾胞性リンパ腫やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫などを対象にP3試験を実施中。今年3月、乾癬治療薬として発売したオテズラは、ベーチェット病への適応拡大に向けた臨床試験を行っています。今年7月には、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬「イストダックス」が、末梢性T細胞リンパ腫治療薬として承認されました。

 

日本法人の野口暁社長は「レブラミドの適応拡大でリンパ腫の領域に入り、炎症・免疫性疾患のビジネスも拡大していく」。アレンCEOも「これから日本ではさらに投資をしていきたい」と話しました。

 

「イノベーションとアクセス 止めてはならない」

ただ、懸念がないわけではありません。日本では現在、▽新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直し▽一部品目を対象とした薬価の毎年改定▽適応拡大に伴う薬価の引き下げ▽費用対効果評価に基づく薬価算定――など、薬価制度の抜本改革に向けた議論が急ピッチで進んでいます。

 

こうした状況の中、セルジーンにとって日本市場はどういう位置付けなのか。会見で問われたアレンCEOは「どういう状況であっても、日本市場は重要だ。最も重要な医薬のイノベーションを推進するマーケットの一つだと思っているし、私の予想では今後もそうだと思っている」と述べました。

 

「日本の環境はよくなった」が…

会見では、新薬創出加算の導入以降、日本で承認申請された医薬品の数が大幅に増えたことや、欧州の一部の国と比べて日本では承認から保険収載までの期間が短いことを示すデータを提示。その上で、

「急速にイノベーション推進策がとられ、日本の環境はよくなった。政策環境はポジティブで、バイオ医薬品企業にとっていいものになっているし、それは患者にとっても好意的なものだ」

と評価しました。

 

一方で、急激な政策変更による予見性の低下には注文を付けました。16年度の薬価制度改革では、予想を超えて売り上げが大きくなった医薬品の薬価を最大50%引き下げる「特例拡大再算定」が導入。今年2月には、通常の薬価改定の時期ではないにもかかわらず、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の薬価が半額に引き下げられました。

 

アレンCEOは「保険償還で一定の変化が特定の薬剤に起こるかもしれない」と見通す一方、「非常に重要なのは予見可能性。イノベーションを推進する政策があること、薬価が維持されていること、予見可能性があるということは、日本市場にとっても重要だし、われわれが将来を考える上でも重要だ」と指摘し、こう訴えました。

 

「イノベーションとアクセスを推進する政策が今後も続くことを期待しているし、対話によってこれが続くようにしていきたいと思っている。革新的新薬へのアクセスが可能であるということ、これは何としても止めてはならない」

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