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医薬品卸 探る「第2の柱」―メディパルHD、新薬開発への投資加速

医薬品卸最大手のメディパルホールディングスが、医薬品開発への投資を加速させています。先月、JCRファーマと業務資本提携を結び、株式の22%を取得して同社を傘下に収めると発表。3月には産業革新機構、武田薬品工業と共同で創薬ベンチャーを立ち上げました。

 

後発医薬品の普及や薬価の引き下げなどにより、収益環境が厳しさを増す中、医薬品卸各社は、本業に続く収益の柱を確保しようと事業領域の拡大を進めています。

 

JCRをグループ傘下に ベンチャー設立にも出資

メディパルホールディングスは9月21日、JCRファーマと業務資本提携を結んだと発表しました。英グラクソ・スミスクライングループが持つJCRの発行済み株式のうち22%を約212億円で取得。筆頭株主となり、持分法適用会社としてグループ傘下に収めます。

 

メディパルホールディングスが製薬会社をグループに迎え入れるのは今回が初めて。今後、両社で米国に合弁会社を設立し、JCRのパイプラインを米国でも開発していく方針です。メディパルHDはこれまでも、JCRが開発する複数の新薬候補に投資。JCRが2016年2月に発売した再生医療製品「テムセル」では、共同で超低温輸送システムを開発するなど、従来から協業関係にありました。

 

メディパルHDは16年度からスタートした中期経営計画「2019メディパル中期ビジョン」で、新薬開発への投資など新規事業からの営業利益を、最終年度の19年度に50億円(15年度は15億円)まで引き上げることを目標としています。今年3月には、産業革新機構、武田薬品工業との共同出資で、創薬ベンチャー「スコヒアファーマ」を設立しました。

 

「医薬品業界の環境変化は著しいものがあり、今後も避けて通ることはできない。環境変化を前提に、さらに成長していくために、新規事業による収益の多角化を推進していく」。長福恭弘専務は、5月の16年度決算説明会でこう述べました。

 

薬価下げ、後発品普及…収益環境厳しく

医薬品卸の収益環境は厳しさを増しています。

 

4大卸の16年度業績は、メディパルHDが唯一、増収を確保しましたが、アルフレッサHD、スズケン、東邦HDは減収となりました。薬価改定で市場がマイナス成長となったことに加え、スズケンと東邦HDはギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー」「ソバルディ」を取り扱ったことで前年度に売り上げが大きく伸びた反動が影響。本業の医薬品卸売事業では、各社とも大幅な営業減益となりました。

大手医薬品卸の業績(16年度)。社名:連結売上高(億円):医薬品卸売事業の売上高(億円)。メディパルHD:30639:20852。アルフレッサHD:25518:22514。スズケン:21270:20307。東邦HD:12310:11806。

メディパルHDの長福専務が指摘する通り、近年の医薬品業界をとりまく環境の急激な変化は、医薬品卸にも大きな影を落とします。薬価の引き下げで市場は停滞し、後発医薬品の使用促進で長期収載品の売り上げが大きく減る一方、利幅の薄い後発品の取り扱いが増加。品目数が多く管理コストもかかる後発品の普及は収益を圧迫します。医療機関や薬局の経営も厳しく、納入価格をめぐる得意先との価格交渉もシビアです。

 

業界3位のスズケンは8月、同社と医薬品卸子会社3社の従業員を対象に、350人程度の早期退職者を募集すると発表しました。

 

事業領域拡大 新たな収益源に

本業の医薬品卸売事業が厳しい中、各社は新たな収益源の確保を急いでいます。

 

メディパルHDは、医薬品開発への投資を加速させる一方、「AR」と呼ばれるMR資格を持つMSを増やし、製薬企業から医薬品の販促活動や市販後調査を受託。同社のARは16年度に2000人まで増加し、販促受託は11億円(5社6製品)、市販後調査受託は5億円(4社4契約)を売り上げました。

 

メディパルHDを除く3社はすでに子会社に製薬企業を持ち、医薬品の製造販売事業を展開。さらに、保険薬局の経営も手がけています。東邦HDはさらに、医療機関や薬局の経営支援サービスも強化。自動音声認識を使った薬局向けの薬剤服用歴システムや訪問看護師向け業務支援端末などを販売しています。今年5月には医療事務の受託事業や介護事業を展開するソラストへの出資を拡大し、業務提携を結びました。

大手医薬品卸の売上高構成(16年度)

 収益の多角化は進みますが、各社の売上高の構成を見てみると、本業以外の事業の存在感はそこまで大きくはありません。医薬品卸売事業への依存度が最も低いスズケンでも、他事業の売上高は全体の10%に届きません。

 

収益性の改善には、事業領域の拡大に加え、本業である物流の高度化や効率化も欠かせません。特に今後さらなる増加が見込まれるスペシャリティー領域の製品への対応は急務です。

 

営業利益率が4大卸で最も低いスズケンは、ICタグを使ってスペシャリティー医薬品の管理を効率化する新たな物流システムの導入に向け、米医薬品卸大手のアメリソースバーゲンと提携。メディパルHDが希少疾病用医薬品を開発するJCRと提携したのも、スペシャリティー医薬品の物流で付加価値を出すのが狙いの一つとみられています。収益の多角化とともに、いかに本業とのシナジーを出していくかも問われることになりそうです。

 

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