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海外レポート

すべてのCDK4/6阻害薬はホルモン陽性/HER2陰性進行乳がんを同じように治療できるのか?|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、新たな作用機序の抗がん剤として注目されているCDK4/6阻害薬。欧州臨床腫瘍学会で、ホルモン受容体陽性/HER2陰性進行乳がんを対象としたabemaciclibの臨床第3相試験の中間解析結果が発表されました。治療はどう変わるのでしょうか?

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

「abemaciclib」ESMOでP3の中間解析結果を発表

スペイン・マドリードで開かれたESMO2017(欧州臨床腫瘍学会)。最新の革新的データに基づくたくさんの報告が寄せられ、例年通り活気にあふれた、刺激的かつ明るい見通しの持てる年次総会となった。

 

進行性のホルモン受容体陽性乳がんでは、ホルモン療法に対して耐性が生じることはよく知られているが、サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬(CDK4/6阻害薬)は、ホルモン療法で問題となる耐性を克服する一つの道となる可能性がある

 

9月10日に行われたESMO2017のPresidential Symposiaで、Angelo Di Leo医師(イタリア・プラート)が、CDK4/6阻害薬abemaciclibの臨床第3相(P3)試験「MONARCH-3試験」の中間解析結果を初めて発表した。

 

この試験は、abemaciclibを閉経後のホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行乳がんに対する初回治療として評価するもの。患者493人を、abemaciclibと非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)の併用群(328人)またはプラセボとNSAIの併用群(165人)に2対1の比率でランダム化した。

 

中間解析の結果によると、盲検下での独立中央判定により評価された無増悪生存期間(PFS)のハザード比は0.5038。PFSは、中間解析時点での追跡期間(中央値17.8カ月)では中央値に達していない。一方、全奏効率はすべての患者で59.2%、測定可能病変のある患者でも43.8%だった。abemaciclibとアロマターゼ阻害薬の併用療法が、アロマターゼ阻害薬に感受性を示す患者に対するファーストラインの治療としての有効性と安全性プロファイルを兼ね備えていることを示すエビデンスだ。

 

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PFS 長期データでは「11~12カ月改善」との見通しも

探索的な解析では、予後不良とされた患者がabemaciclibを追加することで大きなベネフットを達成したことが示唆されている。反面、治療間隔が長く空いた患者(前回治療から数年経過しての再発)や、骨病変のみの患者では、(abemaciclibで良好な治療成績を得られる可能性が低いことが示唆されており)ホルモン単剤療法を選択するのが適切かもしれない。

 

継続的なスケジュールで投与した場合、abemaciclibは概ね良好な忍容性を示した。グレード3/4の好中球減少がみられたのは21.1%、グレード3の下痢は9.5%。Nicholas Turner医師がディスカッションで述べた通り、より観察期間の長いデータでは、PFSの中央値はおそらく11~12カ月改善するだろう

 

主なCDK4/6阻害薬、PFSのハザード比はほぼ同じ

興味深いことに、PFSを主要評価項目とした複数のCKD4/6阻害薬の治験(palbociclibの「PALOMA-2」「PALOMA-3」、ribociclibの「MONALEESA-2」「MONALEESA-3」)では、ハザード比が0.50~0.58の範囲に収まっている。

 

アベマシクリブのサイクリンD1/CDK4に対する活性がサイクリンD3/CDK6に対する活性の14倍であるという点は別として、主なCDK4/6阻害薬―「Ibrance」(palbociclib)、「Kisqali」(ribociclib)、abemaciclib―の活性の差に専門家はさほど注目していない。ただし、abemaciclibは同じクラスのほかの薬剤よりも下痢の発生が多い。これはおそらく継続的な連日投与によるものだろう。

 

中間解析の有望なデータが示されたことで、どれくらいの期間継続して投与する必要があるのか、ほかのCDK4/6阻害薬と同じような価格水準で市場競争を繰り広げることになるのか、abemaciclibの長期的な影響を理解することが急がれる。

 

CDK4/6阻害薬は、アロマターゼ阻害薬耐性のホルモン受容体陽性/HER2陰性の転移性乳がんでのPFSの改善が証明されており、これはこの患者集団に対するCDK4/6阻害薬のクラスエフェクトであることを示している。NCCN(全米がん総合ネットワーク)、ASCO(米国臨床腫瘍学会)、ESMO-ESO ABC3ガイドラインは現在、CDK4/6阻害薬とアロマターゼ阻害薬の併用を、閉経後のホルモン受容体陽性/HER2陰性の転移性乳がんに対する治療の第1選択として推奨しており、合理的な治療アプローチとして支持している。

 

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さらにこれらの薬剤は、乳がんの補助療法としても研究が進められている(Ibranceの「PALLAS試験」「PENELOPE-B試験」、Kisqaliの「EarLEE-1試験」「EarLEE-2試験」、abemaciclibの「monarchE試験」)。

 

「治療シークエンス」「患者選択」残る2つの大きなテーマ

メタ解析で裏付けが得られれば、これまで示されたデータはファーストライン治療を変える意味合いを持つかもしれない。ただ、次の2つのテーマが疑問として残る。

 

複数のCDK4/6阻害薬がある中、最適な治療シークエンスとはどのようなものなのか?

どの薬を最初に投与するのか。そのような順番で投与するのか。ファーストラインとして使うのか、進行後に追加して使うのか。

適切な患者を選択するバイオマーカーを使い、いかにこれらの薬の使用を最適化していくのか?

大きな進展のないまま十数年が経過したホルモン受容体陽性/HER2陰性進行性乳がんの治療だが、新規あるいは「復活」の治療オプションが登場しつつある。患者にとって、期待に胸躍る時がやってきた。

 

(原文公開日:2017年9月15日)

 

【AnswersNews編集長の目】

細胞周期の調節に重要な役割を果たし、細胞増殖を引き起こすCDK4/6を阻害することで、細胞周期の進行を止め、腫瘍の増殖を抑制すると考えられるCDK4/6阻害薬。乳がんに対しては、ファイザーの「イブランス」(パルボシクリブ)とノバルティスの「Kisqali」(ribociclib)が、米国と欧州で承認されています。「イブランス」は急速に売り上げを伸ばしており、16年の世界売上高は21億3500万ドルに達しました。

 

日本での開発状況を整理すると、手術不能または再発乳がんの適応で申請中の「イブランス」は、間もなく承認される予定で、11月にも発売となる見通し。ribociclibは、ホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がんを対象に、フルベストラントとの併用でP3試験を行っています。abemaciclibは手術不能または再発乳がんと乳がんの術後補助療法でP3試験の段階です。米イーライリリーは、ESMO2017で発表した中間解析結果に基づき、今年から世界各国で承認申請を始めると明らかにしています。

 

日本では今年、抗エストロゲン剤「フェソロデックス」(フルベストラント、アストラゼネカ)が閉経後進行・再発乳がんで初回治療から使用可能となりました。CDK4/6阻害薬の登場で、治療はさらに変化していくことになりそうです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。Decision Resources Group は主要7ヶ国の乳がん市場の売上高・患者数の10年予測レポート(Disease Landscape & Forecast : Breast Cancer)を発行しています。レポートに関する問い合わせはこちら

 

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