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コデイン使用制限の根拠にも「MID-NET」本格稼働まで半年あまり―ビッグデータで変わる医薬品の安全対策

大量の医療情報を医薬品の安全対策に活用しようと、厚生労働省が整備を進めている医療情報データベース「MID-NET」。2018年4月の本格稼働が、あと半年あまりに迫ってきました。

 

厚生労働省は6月、咳止め薬として使われるコデイン含有製剤について、12歳未満の小児への投与を禁忌とすることを決定。その根拠の一つとなったのが、MID-NETのデータでした。製薬企業が行う市販後調査の負担軽減にもつながると期待されるMID-NET。ビッグデータの活用は、医薬品の安全対策をどう変えるのでしょうか。

 

全国23病院が協力 400万人規模のDBに

「MID-NET(Medical Information Database Network)」とは、大学病院や民間病院の協力医療機関10拠点23病院の電子カルテデータとレセプトデータ、DPCデータを集めた医療情報データベース。大量の医療情報を活用した薬剤疫学的手法による医薬品の安全対策を行うため、厚生労働省が2011年から整備を進めてきました。

 

MID-NETに協力医療機関として参加するのは、東北大や東京大など国立大7病院と北里研究所・北里大の4病院、NTT東日本病院グループの2病院、徳洲会グループの10病院で、データベースの規模は400万人規模。電子カルテがデータベース化されていることで、治療内容や転帰、検査結果といった詳細な情報を安全対策に利用することが可能となります。

MID-NETの協力医療機関と蓄積されるデータ項目 協力医療機関は23病院。国立大病院:東北大・千葉大・東京大・浜松医大・香川大・九州大・佐賀大。私立大病院は北里研究所・北里大より2院。民間病院はNTT東日本病院グループより2院、徳洲会グループより10院。集積するデータは、来院等情報・傷病情報・処方情報・注射情報・検体検査情報・薬物血中濃度検査・放射線検査情報・生理検査情報・細菌検査情報。

報告中心 現行の対策の限界

医薬品の安全対策はこれまで、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が製薬企業や医療従事者などからの報告を中心に副作用情報を収集し、評価するという手法で行われてきました。ところが、現行の対策には

報告がなければ副作用の存在自体を把握できない
報告のあった副作用がどれくらいの頻度で起こるのかわからない
原疾患による症状なのか、副作用によるものなのかわからない
ほかの医薬品との比較ができない

といった限界があります。MID-NETは、こうした現行の安全対策の限界を補う目的で整備が進められてきました。規制当局が能動的に副作用情報を集められるようになり、母数を知ることができるため副作用の頻度も容易に把握できるようになります。同じ疾患で特定の医薬品を投与した集団とそうでない集団を比較することもでき、副作用かどうかの判別も可能になります。

 

MID-NETで副作用頻度把握 コデイン規制の根拠に

MID-NETは2018年4月に本格稼働する予定ですが、試行事業としてすでに医薬品の安全対策に活用され始めています。

 

厚生労働省は6月22日、咳止めに使われるコデインを含有した製剤について、2018年末までの経過措置期間を設けた上で、19年から12歳未満への小児への投与を「禁忌」とすることを決めました。7月4日には製薬企業各社に添付文書の改訂を指示。対象となる医薬品は、OTC・医療用合わせて650品目以上に及ぶとみられます。

 

今回のコデイン含有製剤の規制はそもそも、米FDA(食品医薬品局)が今年4月にコデインを含有する医療用医薬品の小児への使用を禁忌とすると発表したのが発端。欧州でも15年から小児への鎮咳目的での使用を禁忌とする規制が行われています。

 

コデインは、肝代謝酵素CYP2D6によりモルヒネに代謝されて鎮咳効果を示しますが、遺伝的にCYP2D6の活性が過剰な人では、モルヒネの血中濃度が高くなり、呼吸抑制が発生しやすくなります。欧米での規制強化には、こうした副作用の危険性が背景にあります。

 

日本人で遺伝的にCYP2D6の活性が過剰な人の割合は、欧米人に比べて低いと報告されています。しかし、MID-NETのデータを使った調査で、国内でもコデイン含有製剤の投与後に呼吸抑制を起こした人がいることが明らかになりました。MID-NETが生み出したエビデンスが、小児へのコデインの使用を制限する根拠の一つとなったのです。

MID-NETを用いたコデイン類含有製剤の呼吸抑制の発現リスクの評価 コデイン類含有製剤の処方実態とその内呼吸抑制が疑われるケースの表。厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策本部安全対策調査会(2017年6月22日の資料をもとに作成)

呼吸抑制の発生頻度は0.3%

今回、コデイン含有製剤の使用制限にあたって参考にされたのが、本格稼働を前に厚労省とPMDAが行っているMID-NETの試行的利活用で得られたデータです。

 

2009~15年に協力医療機関を受診した97万6859人のうち、がん患者以外でコデイン含有製剤が処方された7267人について、「呼吸抑制の発生が疑われるケース」を

▽呼吸抑制に対する治療薬(レバロファン、ナロキソン)の処方がある
▽呼吸抑制に関連する診断(呼吸困難、急性呼吸不全、呼吸不全)かつ酸素吸入の実施がある

のいずれかと定義して解析したところ、24人がこれに該当し、発生割合は0.3%。個人情報保護の観点から人数は公表されていませんが、12歳未満と19歳以上でコデイン含有製剤投与後に呼吸抑制を起こしたとみられる患者がいたことがわかりました。

 

18年度から市販後調査に活用 利用料は4200万円

2018年4月の本格稼働と同時に、製薬企業や研究者もMID-NETを利用できるようになります。厚労省は現在、「製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(GPSP省令)の改正に向けた作業を進めており、来年4月からMID-NETなどのデータベースを市販後調査に利用できるようにする計画。製薬企業が市販後調査にMID-NETを利用する場合、利用料は4212万3000円となる見通しです。

 

ビッグデータの活用は、製薬企業による市販後調査のあり方を大きく変える可能性があります。いわゆる「リアルワールドデータ」(実臨床データ)を活用することで調査の精度を上げることができ、多大な費用と手間のかかる調査の負担軽減も期待されます。ほかの医薬品と比較して安全性を評価することもできるようになり、厚労省は来年4月のGPSP省令の改正で、複数の医薬品の情報を比較評価することも可能だということを明確化する方針です。

 

副作用情報を漏れなく、ほぼリアルタイムで把握できるMID-NETですが、対象が10拠点23病院にとどまるため、必ずしも全国民を代表としないという限界もあります。全例調査には活用することはできません。本格稼働後は、データベースのカバー範囲の拡大も課題となります。

 

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