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第一三共

第一三共は2005年に第一製薬と三共が合併して誕生した製薬企業で、売上高は国内4位。循環器領域に強みを持ち、高血圧症治療薬オルメサルタンや抗凝固薬エドキサバンなどが主力。最近はがん領域の研究開発に力を入れています。

AnswersNews編集部による

第一三共の企業分析

主力のオルメサルタンが特許切れ 「がんに強いグローバル企業」へ正念場

2017/12/27 AnswersNews編集部 前田雄樹

2016年度、武田薬品工業を抜いて国内医療用医薬品で売上高トップに立った第一三共。新製品が伸びる国内事業は好調ですが、最主力品のARBオルメサルタンの特許切れに直面しています。「がんに強みを持つ先進的グローバル製薬企業」を中長期ビジョンに掲げる同社。パテントクリフを乗り越え、次なる成長基盤を手にすることはできるのでしょうか。

17~18年度が業績の底

第一三共の2017年3月期(16年度)決算は、売上高が前年度比3.2%減、営業利益が31.8%減の減収減益に沈みました。

最大の要因は、海外で特許切れを迎えたARBオルメサルタンの売り上げ減です。同剤は第一三共にとって最大の主力品ですが、後発医薬品の影響で売上高は2割以上減少。ワクチンを手がける子会社・第一三共北里ワクチンで開発プロジェクトに遅れが生じ、219億円の減損損失を計上したことも追い打ちをかけました。

第一三共の売上高と営業利益の推移の表。オルメサルタンとエドキサバンの売上とともに比較しています。【売上高】15年度:9864億円、16年度:9551億円(前年度比マイナス3.2パーセント)、17年度予想:9300億円(前年度比マイナス2.6パーセント)。【オルメサルタンの売上<地域別>】15年度:2841億円、<日本>921億円、<アメリカ>1116億円、<ヨーロッパ>589億円、<その他>216億円。16年度:2180億円(前年度比マイナス23.3パーセント)、<日本>869億円(前年度比マイナス5.6パーセント)、<アメリカ>664億円(前年度比マイナス40.5パーセント)、<ヨーロッパ>432億円(前年度比マイナス26.7パーセント)、<その他>215億円(前年度比マイナス0.4パーセント)。17年度:1340億円(前年度比マイナス38.5パーセント)、<日本>630億円(前年度比マイナス27.5パーセント)、<アメリカ>140億円(前年度比マイナス78.9パーセント)、<ヨーロッパ>260億円(前年度比マイナス39.8パーセント)、<その他>310億円(前年度比44.2パーセント)。【エドキサバンの売上<地域別>】15年度:150億円、<日本>130億円、<アメリカ>4億円、<ヨーロッパ>15億円、<その他>0億円。16年度:373億円(前年度比148.5パーセント)、<日本>250億円(前年度比92.6パーセント)、<アメリカ>19億円(前年度比317.0パーセント)、<ヨーロッパ>97億円(前年度比525.7パーセント)、<その他>8億円。17年度:650億円(前年度比74.1パーセント)、<日本>390億円(前年度比56.0パーセント)、<アメリカ>20億円(前年度比6.6パーセント)、<ヨーロッパ>220億円(前年度比127.5パーセント)、<その他>20億円(前年度比115.9パーセント)。【営業利益】15年度:1304億円、16年度:889億円(前年度比マイナス31.8パーセント)、17年度:750億円(前年度比マイナス15.7パーセント)。

17年度は海外での特許切れが年間を通して効いてくる上、日本でも後発品が参入。パテントクリフの影響は本格化します。17年度の業績予想は売上高が2.6%減、営業利益は15.7%減。オルメサルタンの売上高は15年度の半分以下まで減り、好調な抗凝固薬エドキサバンや国内事業をもってしてもその穴は埋め切れません。

「今年度を乗り越えれば、来年度はもっと乗り越えやすいというか、未来がはっきりしてくると思う。そういう意味では今年度しっかりやることが大事だ」

5月の決算説明会で中山譲治会長兼CEOは強調しました。第一三共は17年度が業績の底と見ていますが、アナリストからは「18年度までボトムは続く」との声も漏れます。いずれにしても「来年度も厳しい」(中山会長兼CEO)のは確か。正念場は続きます。

「ハイブリッド」旗降ろし新薬路線に回帰

過去5年、第一三共はなかなか業績を伸ばせずにきました。

売上高は円安による押し上げで1兆円を超えた13年度を除けば、9000億円台後半で足踏み。営業利益は、前年に行った1500人規模の人員削減の効果があった15年度以外はむしろ減少傾向にあります。

14年度は子会社プレキシコンが開発した抗がん剤「ゼルボラフ」の収益性低下で350億円、16年度はワクチン子会社・第一三共北里ワクチンの開発プロジェクトの遅れで240億円と、多額の減損損失を計上したことが響きました。

第一三共の主な業績指標の推移の図。【売上高】12年度:9979億円、13年度:11182億円、14年度:9194億円、15年度:9864億円、16年度:9551億円。【営業利益】12年度:1005億円、13年度:1116億円、14年度:744億円、15年度:1304億円、16年度:889億円。14年度は抗がん剤「セルボラフ」の営業権で減損損失(350億円)。15年度はリストラ効果で大幅増益。16年度は第一三共北里ワクチンの開発プロジェクトの遅れで減損損失(240億円)。【経常利益】12年度:991億円、13年度:998億円、14年度:799億円、15年度:1224億円、16年度:878億円。【純利益】12年度:666億円、13年度:609億円、14年度:3221億円、15年度:823億円、16年度:535億円。14年度はランバクシーの実質売却に絡み子会社合併差益(3602億円)【ネットキャッシュ】12年度:1048億円、13年度:805億円、14年度:1515億円、15年度:5111億円、16年度:5161億円。15年度はサンファーマ株の売却で手元資金が膨れる。

この5年で第一三共の経営に大きな影響を与えたできごとといえば、08年に子会社化したインドの後発品企業ランバクシーを手放したことでしょう。「新薬と後発品」「先進国と新興国」にまたがる「ハイブリットビジネス」を目指し、5000億円近い巨費を投じて買収しましたが、品質問題が相次いで発覚。サンファーマ(インド)に実質売却し、15年に経営から撤退しました。

これが数字となって表れているのが、純利益が3221億円に膨らんだ14年度。第一三共はこの年、ランバクシーの売却に絡んで3602億円もの子会社合併差益を計上しました。インドの株高も背景に、第一三共が保有するランバクシーの株価が上がったためです。

第一三共はランバクシー株を譲渡するかわりに取得したサンファーマの株式も15年度にすべて売却。「ハイブリッドビジネス」の旗を降ろす一方、株の売却で得た4000億円近いキャッシュも元手に、新薬に集中する路線に転換しました。

がん事業の成否が中長期の成長を左右

中長期ビジョンに掲げる通り、第一三共は次なるビジネスの柱として、がん領域の強化を進めています。2020年度までの中期経営計画では、がん事業の立ち上げを戦略目標の1つに掲げており、25年度には3000億円規模の事業に育てるとしています。

がん領域の柱になるのは、パイプラインに複数の新薬候補が控える「白血病」と「抗体薬物複合体(ADC)」。白血病治療薬のキザルチニブは臨床第3相試験まで進んでおり、18年度の承認・発売を予定。ピーク時にはグローバルで1000億円規模の売り上げを期待しています。

独自技術に自信を持つADCでは、臨床段階に2品目、前臨床段階に4品目を保有。最も開発が進んでいる、HER2を標的とした「DS-8201」は米FDA(食品医薬品局)からブレークスルーセラピー(画期的治療薬)の指定を受けており、乳がんなどを対象に臨床第2相試験が進行中です。

パテントクリフの克服には、オルメサルタンにかわる主力品候補エドキサバンの成長も欠かせません。売り上げは急速に伸びており、現在、日本と欧州を中心に上位製品を追い上げています。

経口抗凝固薬市場自体も伸びており、20年度までに1200億円以上に引き上げたい考え。ランバクシーを手放したことやオルメサルタンの特許切れにより、海外売上高比率は39%と同業他社を大きく下回っており、海外でどう稼いでいくかもポイントです。

収益力に課題

収益力も大きな課題です。16年度の営業利益率は9.3%と上場新薬メーカーの平均(13.6%)を下回っており、ROEも優良企業の目安とされる10%の半分にも達していません。総資本回転率も低く、数字からは経営効率の低さが浮き上がってきます。

第一三共の営業利益率とROEの推移の折れ線グラフ。【営業利益率】12年度:7.3パーセント、13年度6.2パーセント、14年度24.7パーセント、15年度:6.7パーセント、16年度:4.5パーセント、22年度(中期経営計画最終ね年度の目標):8.0パーセント。【ROE】12年度:10.1パーセント、13年度:10.0パーセント、14年度:8.1パーセント、15年度:13.2パーセント、16年度9.3パーセント、22年度(中期経営計画最終ね年度の目標):15.0パーセント.

現行の中期経営計画では、最終年度に営業利益率15%、ROE8%以上が目標。「利益創出力の強化」を掲げ、生産体制の効率化や調達の強化によるコスト削減、保有株式の売却による資産のスリム化に取り組んでいます。ただ、自社品で利益率の高いオルメサルタンの特許切れは、利益率向上の足かせとなります。

第一三共は現行の中期経営計画の5年間で、累計1兆4000億円を成長投資の枠として用意。がん領域の製品・パイプライン獲得を最優先に、エドキサバンの成長や米国事業の拡大などに投資する方針です。

がん領域に強い、高収益の企業に生まれ変われるのか。まずは、直面するパテントクリフを乗り越えなければなりません。

【PickUp】後発品事業にも注力 オーソライズド・ジェネリックとバイオシミラーで

ランバクシーを手放してグローバルな後発医薬品事業からは手を引いたものの、国内では後発品にも力を入れており、今後も主要事業の1つとして規模を拡大させていく方針です。

オーソライズド・ジェネリック(AG)を中心に事業の強化を図っています。これまで承認を取得したAGは、抗菌薬レボフロキサシン(先発品名・クラビット)や高血圧症治療薬オルメサルタン(オルメテック)、同テルミサルタン(ミカルディス)、高脂血症治療薬ロスバスタチン(クレストール)など。国内企業で随一の品揃えを誇ります。

また、国内の新薬大手では唯一、バイオシミラーの開発も手がけています。関節リウマチ治療薬エタネルセプト(エンブレル)のバイオシミラーは商用生産が確立できず開発を中止しましたが、2016年7月には米アムジェンとバイオシミラー9品目の日本での商業化で提携を結びました。

第一三共の主要情報

主要製品

第一三共の主要製品と2016年度売上高の表。【グローバル製品】オルメサルタン(高血圧症治療薬):2180億円(前年比マイナス23.3パーセント)、プラスグレル(抗血小板薬):416億円(前年比29.2パーセント)、エドキサバン(抗凝固薬):373億円(前年比148.5パーセント)。【国内】ネキシウム(抗潰瘍薬):840億円(前年比1.9パーセント)、オルメテック(高血圧症治療薬):694億円(前年比マイナス6.0パーセント)、メマリー(アルツハイマー型認知症治療薬):469億円(前年比10.4パーセント)、ロキソニン(消炎鎮痛剤):374億円(マイナス22.3パーセント)、テネリア(2型糖尿病治療薬):242億円(前年比46.1パーセント)、リクシアナ(抗凝固薬):250億円(前年比92.6パーセント)、レザルタス(高血圧症治療薬):175億円(前年比マイナス3.5%)、プラリア(骨粗鬆症治療薬):180億円(前年比44.1パーセント)、ランマーク(がん骨転移による骨病変治療薬):139億円(前年比12.4パーセント)、イナビル(抗インフルエンザウイルス薬):196億円(前年比39.3パーセント)、クラビット(抗菌薬):151億円(前年比マイナス17.8パーセント)、オムニパーク(造影剤):142億円(マイナス15.9パーセント)、ユリーフ(排尿障害治療薬):114億円(前年比マイナス3.4パーセント)、アーチスト(高血圧・狭心症・慢性心不全治療薬):106億円(マイナス29.3パーセント)、メバロチン(高コレステロール血症治療薬):104億円(マイナス22.2パーセント)、エフィエント(抗血小板薬):104億円(112.7パーセント)、第一三共エスファ:202億円前年比(9.2パーセント)、ワクチン:385億円(前年比4.7パーセント)、第一三共ヘルスケア:667億円(前年比25.0パーセント)。

パイプライン

第一三共のパイプライン一覧リスト。フェーズ2以降、2017年10月現在。【がん】<フェーズ2>日本:キザルチニブ(急性骨髄性白血病)、アメリカ:ペキシダルチニブ(膠芽細胞腫)、ヨーロッパ:パトリズマブ(頭頸部がん)、日本:DS-1647(膠芽腫)、アジア:ペキシダルチニブ(c-KITメラノーマ)、アメリカ:ペキシダルチニブ(固形がん、メラノーマ)、日本・アメリカ・ヨーロッパ:DS-8201(乳がん)、日本・アジア:DS-8201(胃がん)。<フェース3>日本:デノスマブ(乳がん術後補助療法)、アメリカ・ヨーロッパ:ベムラフェニブ(メラノーマ術後補助療法)、アメリカ・ヨーロッパ:キザルチニブ(急性骨髄性白血病)、アメリカ・ヨーロッパ:ペキシダルチニブ(腱滑膜巨細胞腫)、日本:ニモツズマブ(胃がん)。【循環代謝】<フェーズ3>日本:エサキセレノン(高齢AF)、日本:プラスグレル(虚血性脳血管障害)、日本:エサキセレノン(高血圧症)、日本:エサキセレノン(糖尿病性腎症)。<申請中>ASCA:エドキサバン(AF/VTE)。【その他】<フェーズ3>アメリカ・ヨーロッパ:ミロガバリン(繊維筋痛症)、日本・アジア:ミロガバリン(糖尿病性末梢神経・障害性疼痛)、日本・アジア:ミロガバリン(帯状疱疹後神経痛)、日本:ラニナミビル(インフルエンザ)。<申請中>日本:ヒドロモルフォン(がん疼痛)。【ワクチン】<フェーズ3>日本:5種混合、日本:MMR。<申請中>日本:インフルエンザ(皮内用)、日本:インフルエンザ(経鼻)。

年収

第一三共の年収の推移の棒グラフ。12年度:998.2万円、13年度:1036.3万円、14年度:1111.9万円、15年度:1092.3万円、16年度:1133.5万円。

第一三共の年度別平均年収表。平均年収とあわせて平均年齢、平均勤続年数、従業員数をまとめています。【平均年収(単体)】12年度:998.2万円、13年度:1036.3万円、14年度:1111.9万円、15年度:1092.3万円、16年度:1133.5万円。【平均年齢(単体)】12年度:41.8歳、13年度:42.3歳、14年度:42.5歳、15年度:43.0歳、16年度:43.3歳。【平均勤続年数(単体)】12年度:17.3年、13年度:17.7年、14年度:18.1年、15年度:18.5年、16年度:18.8年。【従業員数(単体)】12年度:5771人、13年度:5744人、14年度:5306人、15年度:5206人、16年度:5310人。【従業員数(連結)】12年度:32229人、13年度:32791人、14年度:16428人、15年度:15249人、16年度:14670人。

第一三共の基本情報

2017年12月更新

社名 第一三共株式会社(DAIICHI SANKYO COMPANY, LIMITED)
本社所在地 東京都中央区日本橋本町3-5-1
設立 2005年9月28日
資本金 500億円
上場 東証1部
代表者名 眞鍋淳(代表取締役社長)
主な事業所所在地 【支店】札幌市、仙台市、東京都中央区・千代田区、千葉市、さいたま市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、高松市、福岡市
【研究所】東京都品川区、東京都江戸川区
【工場】神奈川県平塚市、大阪府高槻市、福島県いわき市、群馬県千代田町、神奈川県小田原市
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