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塩野義製薬

塩野義製薬は1878年創業の大阪市に本社を置く製薬企業。感染症や疼痛・神経領域に強みを持っています。2016年度の売上高は業界10位ですが、利益率ではトップクラス。低分子医薬品の創薬には定評があり、自社創製し英ヴィーヴに導出した抗HIV薬のロイヤリティー収入が好業績を支えています。

AnswersNews編集部による

塩野義製薬の企業分析

ロイヤリティー収入が伸び業績好調 国内・米国に課題あり

2017/12/11 AnswersNews編集部 前田雄樹・山岡結央

抗HIV薬を中心としたロイヤリティー収入が伸び、最高益を更新し続ける塩野義製薬。しかし、ロイヤリティー収入を除くと足元は不安定。業績が好調なうちに、事業基盤の強化が求められています。

連続で最高益を更新 業績は右肩上がり

塩野義製薬の2016年度の業績は、売上高が3389億円(前年度比9.3%増)で、利益は各段階とも過去最高を更新しました。

主な業績指標の推移の表。売上高:2015年度3100億円、2017年度予想は3450億円で前年度比1.8パーセント増を見込んでいます。営業利益:2015年度914億円、2016年度1082億円で前年度比18.3パーセント増。2017年度予想は1135億円で前年度比4.9パーセント増を見込んでいます。営業外利益:2015年度127億円、2016年度193億円で前年度比52.0パーセント増。塩野義製薬の好業績の最大の要因であるロイヤリティー収入は、2015年度1018億円、2016年度1157億円で前年度比13.6パーセント増。2017年度予想は1503億円と前年度比30.0パーセント増を見込んでいます。そのうちクレストールは2015年度476億円、2016年度330億円と前年度比30.7パーセント減。2017年度予想は225億円と前年度比31.8パーセント減となる見込み。一方HIVフランチャイズは2015年度405億円、2016年度733億円と前年度比81.0パーセント増。2017年度予想は1033億円と前年度比40.9パーセント増を見込んでいます。

好業績の最大の牽引役は、抗HIV薬のロイヤリティー収入。英ヴィーヴヘルスケアにライセンスを供与している抗HIV薬「テビケイ」と、それを含む配合剤「トリーメク」からもたらされるロイヤリティー収入は、16年度に733億円(前年度比81.0%増)に達しました。17年度は1000億円を上回り、売上高全体の3分の1を占めるまでに膨らむ見通しです。

ちなみに塩野義はヴィーヴの株式の10%を保有しており、額は非公表ですがヴィーヴから配当を受け取っています。16年度は配当を含め193億円(52.0%増)の営業外収益を計上。過去最高を更新し続ける経常利益を支えています。

実は塩野義にとって、16~17年は経営の危機となるはずでした。稼ぎ頭だった高脂血症治療薬「クレストール」が、世界各国で相次いで特許切れを迎えるからです。しかし塩野義は、販売権を持つ英アストラゼネカから受け取るロイヤリティーの料率を下げるかわりに、受け取り期間を延長するよう契約を変更。急激な売り上げ減を回避し、パテント「クリフ(崖)」を「ヒル(丘)」に変えました。

その後、抗HIV薬はクレストールのロイヤリティー収入減を補って余りあるまでに成長。主力製品の世代交代がピタリとはまりました。

ロイヤリティー収入の増加のグラフ。クレストール:2012年度630億円、2013年度657億円、2014年度474億円、2015年度476億円、2016年度330億円、2017年度225億円の見込み。HIVフランチャイズ:2014年度58億円、2015年度405億円、2016年度733億円、2017年度1033億円の見込み。

海外大手も注目する創薬力の高さ

高脂血症治療薬「クレストール」に、抗HIV薬の「テビケイ」「トリーメク」。塩野義は海外の大手製薬企業も欲しがる薬を次々と生み出し、その創薬力の高さには定評があります。

2020年度までの中期経営計画では、「創薬型製薬企業として成長する」ことを目標に掲げており、「ファーストインクラス(FIC)」と「ラストインクラス(LIC))」の創薬に注力。16年度、塩野義の開発パイプラインに占める自社創製(共同開発品も含む)の化合物の割合は68.2%で、国内製薬企業の中でも群を抜いています。

クレストールと抗HIV薬に続いて大型が見込まれる新薬も、発売が近づいています。新規作用機序を持ち、1回の経口投与で治療が完了する抗インフルエンザウイルス薬「S-033188」は、スイス・ロシュとライセンス契約を締結。日本では17年10月に申請にこぎ着け、グローバルでは臨床第3相試験を進めています。

英調査会社エバリュエートファーマは、S-033188の2022年の世界売上高を5億9700万ドル(1ドル=110円換算で約657億円)と予想。手代木功社長は10億ドルを超えるとの見通しを示しており、ロイヤリティー収入のさらなる拡大に期待がかかります。

収益力は業界トップクラス 一方で国内・米国の強化が課題

ロイヤリティー収入は利益にそのまま直結します。16年度の営業利益率は31.9%におよび、収益力の高さは国内の製薬企業の中でもトップクラス。「優等生」と称されるアステラス製薬(19.9%)をもしのぎます。塩野義は17年度も各利益で過去最高をさらに更新する見通しで、営業利益率は32.9%を予想しています。

営業利益率の推移の棒グラフ。アステラス製薬と、上場製薬企業33社の平均と比較しています。

ロイヤリティー収入に支えられる好業績ですが、足元のビジネスは精彩を書いています。国内事業は減収が続き、米国事業も赤字から抜け出せていません。手代木社長も「生産性はロイヤリティーを除いたベースではまだまだ心もとない」と認めており、日米で事業基盤の強化を急いでいます。

16年度の国内医療用医薬品の売上高は前年度比2.5%減の1580億円で、17年度は1441億円とさらに減少する見通し。クレストールやARB「イルベタン」の特許切れが響きます。抗精神病薬「サインバルタ」の特許切れも近く、ADHD治療薬「インチュニブ」やオピオイド誘発性便秘症治療薬「スインプロイク」といった新製品の販売に力を入れる方針です。

国内・米国売上高の推移の表。売上高:2013年度2897億円、2014年度2740億円、2015年度3100億円、2016年度3389億円、2017年度3450億円の見込み。全体の売上高のうち国内医療用医薬品:2013年度1683億円、2014年度1614億円、2015年度1621億円。国内医療用医薬品のうちのクレストールの売上高:2013年度411億円、2014年度436億円、2015年度437億円、2016年度431億円、2017年度344億円の見込み。シオノギInc.(米国)の売上高:2013年度214億円、2014年度159億円、2015年度166億円、2016年度179億円、2017年度112億円の見込み

米国事業では、販売が振るわない膣萎縮症治療薬「オスフィーナ」の販売権を17年3月にカナダのDuchesnay社に譲渡。オピオイド誘発性便秘症治療薬「Symproic」は米Purdue社と事業提携を結びました。販売をテコ入れし、19年度には米国事業の黒字化を目指しています。

現在の塩野義の好業績は、薬そのものの価値も去ることながら、手代木社長の手腕によるところも小さくありません。クレストールのロイヤリティーの見直しでは業界をあっと驚かせましたし、英ヴィーヴからも抗HIV薬での提携で好条件を引き出しました。17年度、就任10年目を迎える手代木社長。その去就にも注目が集まります。

【PickUp】「ペプチスター」設立 国内ペプチド原薬体制を強化

塩野義製薬は17年9月、創薬ベンチャーのペプチドリーム、積水化学工業とともに、ペプチド原薬の製造会社「ペプチスター」を設立しました。

ペプチドは低分子医薬品と比べて標的分子への特異性が高く、抗体医薬品よりも製造コストが低いことから、次世代の医薬品として注目を集めています。国内外で研究開発が活発化しており、今後、市場は大きく成長していく見通し。ペプチスターは、ペプチド原薬を安価で安定供給することで、「ペプチド原薬市場5兆円のうち8割の売上高4兆円を目指す」(ペプチスター・窪田規一社長)といいます。

塩野義はペプチドリームとペプチド創薬で共同研究も実施中。ペプチスターは、19年7~9月の工場稼働を目指しています。

塩野義製薬の主要情報

主要製品

塩野義製薬の主要製品一覧リスト。製品別の2016年度売上高、前年比をまとめています。国内医療用医薬品:クレストール(高脂血症治療薬)431億円、前年度比マイナス1.4パーセント。サインバルタ(抗精神病薬)190億円、前年度比25.0パーセント。イルベタン類(高血圧症治療薬)153億円、前年度比マイナス2.5パーセント。オキシコンチン類(持続性疼痛治療薬)97億円、前年度比マイナス3.0パーセント。フィニバックス(抗菌薬)33億円、マイナス13.2パーセント。ピレスパ(突発性肺線維症治療薬)58億円、マイナス3.3パーセント。ラピアクタ(抗インフルエンザ薬)29億円、前年度比45.0パーセント。フロモックス(抗菌薬)84億円、マイナス25.7パーセント。リンデロン等外用72億円、前年度比マイナス10.0パーセント。クラリチン(アレルギー性疾患治療薬)37億円、前年度比15.9パーセント。フルマリン(抗菌薬)34億円、前年度比マイナス19.0パーセント。一般用医薬品68億円(前年度比38.8パーセント)。海外:Osphena(膣萎縮症治療薬)47億円、マイナス2.1パーセント。ロイヤリティー収入:クレストール(高脂血症治療薬)330億円、前年度比マイナス30.7パーセント。HIVフランチャイズ(抗HIV薬)733億円、前年度比81.0パーセント

パイプライン

塩野義製薬のパイプライン一覧リスト。フェーズ2以降、2017年10月時点のものです。感染症:cefiderocol(多剤耐性グラム陰性菌感染症)、S-033188(インフルエンザ)共にグローバルでフェーズ3。感染症申請中:cefiderocol(多剤耐性グラム陰性菌感染症)がアメリカで、S-033188(インフルエンザ)が日本で、S-033188(インフルエンザ/小児)が日本で申請中です。疼痛・神経領域:S-120083(炎症性疼痛)がアメリカでフェーズ2。グアンファシン(ADHD/成人)が日本でフェーズ3。ナルデメジン(オピオイド誘発性便秘症)がヨーロッパで、リスデキサン(ADHD/小児)が日本で申請中。代謝:S-237648(肥満症)が日本で、S-707106(糖尿病)がアメリカでフェーズ2。フロンティア:S-588410(膀胱がん)が日本・ヨーロッパで、S-488210(頭頸部がん)がヨーロッパで、S-525606(スギ抗原によるアレルギー性鼻炎)が日本で、S-222611(悪性腫瘍)がヨーロッパでフェーズ2。S-588410(食道がん)が日本でフェーズ3。ルストロンボパグ(慢性肝疾患による血小板減少症)がグローバルで、S-524101(ダニ抗原による小児通年性アレルギー鼻炎)が日本で申請中です。

年収

塩野義製薬の平均年収の推移棒グラフ:2012年度955.5万円、2013年度943.5万円、2014年度945.5万円、2015年度959.6万円、2016年度1015.1万円

塩野義製薬の年度別平均年収表。平均年収とあわせて平均年齢、平均勤続年数、従業員数をまとめています。平均年収(単体):2012年度955.5万円、2013年度943.5万円、2014年度945.5万円、2015年度959.6万円、2016年度1015.1万円。平均年齢(単体):2012年度38.4歳、2013年度38.8歳、2014年度39.4歳、2015年度40.0歳、2016年度40.4歳。平均勤続年数(単体):2012年度13.7年、2013年度14.1年、2014年度14.3年、2015年度14.5年、2016年度14.7年。従業員数(単体):2012年度6544人、2013年度6578人、2014年度6780人、2015年度6780人、2016年度6638人。従業員数(連結):2012年度30481人、2013年度31225人、2014年度31328人、2015年度31168人、2016年度29900人

塩野義製薬の基本情報

2017年12月更新

社名 塩野義製薬株式会社(SHIONOGI & CO., LTD.)
本社所在地 大阪府大阪市中央区道修町3丁目1番8号
設立 1919年6月5日
資本金 212億7974万2717円
上場 東証1部
代表者名 手代木功(代表取締役社長)
主な事業所所在地 【支店】東京都千代田区
【工場】大阪府摂津市、岩手県胆沢群金ケ崎町
【研究所】大阪府豊中市、札幌市
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