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アステラス製薬

アステラス製薬は、山之内製薬と藤沢薬品工業が2005年に合併して発足した売上高国内2位の製薬企業です。一般用医薬品や後発医薬品を扱わない新薬メーカーで、重点領域は「泌尿器」「がん」「免疫科学」「腎疾患」「神経科学」。「筋疾患」「眼科」でも新薬開発に取り組んでいます。

AnswersNews編集部による

アステラス製薬の企業分析

高収益の「優等生」 迫る“第2の崖”どう克服?

2017/11/29 AnswersNews編集部 前田雄樹・山岡結央

パテントクリフからのV字回復を果たし、「製薬業界の優等生」と称されるアステラス製薬。国内最大手の武田薬品工業を営業利益で上回り、足元の業績は好調ですが、「選択と集中」の手を緩めることはありません。

外部資源を積極活用

山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し、国内2位のアステラス製薬が誕生してから12年余り。「自社内での創薬だけにこだわっていては、なかなか革新的な新薬を生み出せない」。畑中好彦社長が説明するように、アステラスは外部の研究資源を積極的に活用し、新薬開発につなげてきました。

2016年度、世界で2500億円余りを売り上げた主力の前立腺がん治療薬「XTANDI」(日本製品名・イクスタンジ)は、米メディベーション社からの導入品。13年には米アムジェンと合弁会社「アステラス・アムジェン・バイオファーマ」を設立し、共同開発した高コレステロール血症治療薬の抗PCSK-9抗体「レパーサ」を16年に発売しました。骨粗鬆症治療薬の抗スクレロスチン抗体ロモソズマブも申請中で、急性リンパ性白血病治療薬ブリナツモマブは国内臨床第2相(P2)試験が進行中です。

導入品は自社品に比べて利益率で劣るものの、畑中社長が説明するように自社品にこだわり過ぎていてはなかなか新製品を世に送り出すことはできません。新薬事業に集中するアステラスにとって、継続的に新薬を発売できるかはまさに生命線。外部提携の機会は常に探っており、自社品だからといって開発を優先することもありません。

こうした姿勢は販売面でも貫かれています。国内では他社とのコ・プロモーションを積極的に展開。国内で主力を担うARB「ミカルディス」や疼痛治療薬「セレコックス」、喘息・COPD治療薬「シムビコート」は、すべてコプロ製品です。

収益力は業界屈指

アステラスが「製薬業界の優等生」と称されるゆえんは、その強固な財務体質にあります。高い収益力で毎年確実に利益を積み上げ、16年度末時点で3000億円を超える現預金を保持。外部資源の獲得にかかる費用も自己資金でまかなっており、無借金経営を続けています。

主な業績指標の推移の表。売上高は2012年度1兆56億円、2013年度1兆1399億円、2014年度1兆2473億円、2015年度1兆3727億円、2016年度1兆3117億円。営業利益は2012年度1539億円、2013年度1168億円、2014年度1857億円、2015年度2490億円、2016年度2608億円。営業利益率は2012年度15.3%、2013年度10.2%、2014年度14.9%、2015年度18.1%。純利益は2012年度829億円、2013年度909億円、2014年度1359億円、2015年度1937億円、2016年度2187億円。研究開発費は2012年度1820億円、2013年度1915億円、2014年度2066億円、2015年度2257億円。現預金は2012年度2338億円、2013年度3913億円、2014年度3964億円、2015年度3600億円

アステラスで特筆すべきは、その収益力の高さです。12年度には営業利益で武田薬品を上回り、合併以来の念願だった「武田超え」を実現。16年度の営業利益率は19.9%、ROE(自己資本利益率。この指標が高いほど収益性も高い。一般的な基準では1015%で優良企業とされる。)は17.2%と、収益性を示す指標はいずれも業界トップクラスです。

そもそも05年に山之内と藤沢が合併した最大の目的は、研究開発費の規模拡大にありました。実際、アステラスの研究開発費は合併当時の1421億円から、16年度には2081億円まで増加。研究開発投資の水準を維持するために、アステラスは利益重視の経営を行ってきました。

アステラスが優等生と呼ばれるもう一つの理由は、パテントクリフからのV字回復を果たしたこと。主力品の特許切れで業績低迷からなかなか抜け出せない企業も少なくない中、アステラスは短期間で業績を再び成長軌道に戻しました。

これは、ROEの推移にはっきりと表れています。

ROEの推移のグラフ

合併後、16.6%まで上がり続けたROEは、当時世界で合わせて3000億円以上を売り上げていた免疫抑制剤「プログラフ」と排尿障害改善薬「ハルナール」の特許切れにより、10年度には6.6%まで低下。しかし、11年度に過活動膀胱治療薬「ベタニス」、12年度にXTANDIと、有力な新薬を相次いで発売したことで成長を回復。XTANDIがブロックバスターとなった15年度には特許切れ前の水準まで回復し、16年度には過去最高を記録しました。

資産の売却を進め、経営効率を向上

足元の業績は堅調ですが、それでも経営効率を高めるための取り組みを緩めることはありません。

1517年度の中期経営計画では「Operational Excellence」を掲げ、16年には施設・設備管理子会社アステラスビジネスサービスを解散し、同社従業員を対象に早期退職の募集を行うと発表。非重点領域の皮膚科事業はデンマークのレオファーマに譲渡し、国内の長期収載品も一部売却しました。13年には「プログラフ」を生み出した名門の発酵創薬研究部門も手放し、業界関係者を驚かせました。

こうした取り組みの成果は数字にもはっきりと表れています。手持ちの資産をどれだけ効率的に売り上げに結び付けられたかを示す総資産回転率は、合併した05年度の55.5%から、16年度には72.0%16.5ポイント上昇。経営をスリム化し、効率性を高めたことが、財務の強さと収益性の高さにつながっています。

新薬創出力の強化に注力

効率化で生み出した豊富なキャッシュを振り向ける先は、やはり研究開発。派手さはないものの、パイプラインの拡充と新規領域への進出を狙ったM&Aや提携には積極的です。

アステラスは現在の重点領域「泌尿器」「がん」「免疫科学」「腎疾患」「神経科学」に加え、「眼科」「筋疾患」を新規領域として育てていく方針です。

眼科領域では、16年には米バイオベンチャーのオカタ社を467億円で買収。hES細胞(ヒト胚性幹細胞)を網膜色素皮上皮細胞に分化させて注入する再生医療製品を獲得し、萎縮型加齢黄斑変性とStargardt病を対象に臨床第2相(P2)試験を行っています。筋疾患領域では、米サイトキネティクス社と提携。脊髄性筋萎縮症などを対象とした新薬候補の開発を進めています。

合併後に参入したがん領域では、16年には独ガニメド社を買収し、抗がん剤「IMAB362」を獲得。胃食道がんの適応でP2試験の段階にあり、畑中社長は「XTANDIに続くがん領域の新たな中核になる」と期待を寄せています。09年に買収した米アジェンシス(18年に研究活動を終了予定)からは米シアトル・ジェネティクスとの提携で複数の抗体薬物複合体(ADC)が生まれ、現在5つの新薬候補が臨床試験に入っています。

一方、自社創製品では、FLT3AXL阻害剤ギルテリチニブが急性骨髄性白血病の治療薬として日米欧アジアでP3試験を実施中。FDAからオーファンドラッグ指定を受けました。

相次ぐ特許切れ 主力製品も伸び悩む

特許切れを乗り越え、業績好調のアステラスですが、早くも次なるパテントクリフに差し掛かりつつあります。

今年6月には、国内の最主力品である「ミカルディス」に後発医薬品が参入。17年度は前年から400億円余り売り上げが落ちる見通しです。世界売上高が1000億円を超える過活動膀胱治療薬「ベシケア」や、国内の主力製品である「セレコックス」「シムビコート」などが、19年度までに相次いで特許切れを迎えます。

アステラスの16年度の売上高は前年度比4.4%減の13117億円と、10年度以来6年ぶりの減収となりました。17年度は1.1%の減収を予想しており、最終利益も16年度の過去最高から一転、4年ぶりの減益に沈む見通しです。

アステラスにとって、2年連続で売上高が前年度を下回るのは合併後初めて。パテントクリフからのV字回復を支えたXTANDIの成長もスローダウンしてきました。「ベタニス」は17年度、1000億円を突破する見通しですが、相次ぐ特許切れの影響をカバーするにはインパクトに欠けます。

2度目の壁を、今度はどんな形で克服するのでしょうか。「優等生」の手腕が問われます。

アステラス製薬の主要情報

主要製品

主要製品の売り上げリスト(2016年度売上高/前年比)グローバル製品はイクスタンジ(前立腺がん治療薬)2521億円、エリガード(前立腺がん治療薬)159億円/-9.6%、ベシケア(過活動膀胱治療薬)1161億円/-14.4%、ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ(過活動膀胱治療薬)988億円/21.0%、ハルナール/オムニック(排尿障害改善薬)477億円/-10.8%、プログラフ(免疫抑制剤)1862億円/-8.5%、ファンガード/マイカミン(抗真菌薬)403億円/-3.3%、国内はミカルディス(高血圧症治療薬)932億円/-4.1%、セレコックス(疼痛治療薬)476億円/2.2%、シムビコート(喘息・COPD治療薬)393億円/5.0%、ボノテオ(骨粗鬆症治療薬)138億円/-2.2%、ジェニナック(抗菌薬)101億円/-6.3%、ワクチン345億円/-16.1%、アーガメイト(高カリウム血症治療薬)58億円/-5.6%、ゴナックス(前立腺がん治療薬)45億円/15.9%、シムジア(関節リウマチ治療薬)77億円/17.9%、スーグラ(2型糖尿病治療薬)95億円/30.2%、リピトール(高脂血症治療薬)232億円/-24.9%、マイスリー(不眠症治療薬)147億円/-18.0%、ガスター(胃炎・胃潰瘍治療薬)107億円/-27.4%、セロクエル(統合失調症治療薬)75億円/-28.4%

パイプライン

アステラス製薬のパイプライン(フェーズ2以降、2017年11月現在)がん領域のフェーズ2はエンザルタミド(肝細胞がん)、AGS-16C3F(腎細胞がん)、IMAB362(胃食道接合部腺がん)、enfortumab vedotin(尿路上皮がん)、ブリナツモマブ(急性リンパ性白血病)、フェーズ3はエンザルタミド(非転移性去勢抵抗性前立腺がん)、エンザルタミド(非転移性生化学的再発前立腺がん)、エンザルタミド(転移性ホルモン感受性前立腺がん)、ギルテリチニブ(急性骨髄性白血病)、デガレリクス(前立腺がん(3カ月製剤))、申請中はエンザルタミド(去勢抵抗性前立腺がん(錠剤))。泌尿器・腎疾患領域のフェーズ2はYM311(FG-2216)(腎性貧血)、ASP8232(糖尿病性腎症)、ASP6294(膀胱痛症候群/間質性膀胱炎)、フェーズ3はロキサデュスタット(慢性腎臓病(保存期及び透析期)に伴う貧血)、ミラベグロン(小児の神経因性膀胱)、申請中はソリフェナシン(小児の神経因性膀胱)、ソリフェナシン/ミラベグロン(過活動膀胱)。免疫科学・神経科学領域のフェーズ2はbleselumab(生体腎移植患者の再発性巣状糸球体硬化症)、ASP1707(関節リウマチ)、ASP8062(綿維筋痛症)、ASP4070(JRC2-LAMP-vax)(スギ花粉症)、ペフィシチニブ(関節リウマチ)、ASP7962(変形性関節症)、ASP0819(綿維筋痛症)、ASP5094(関節リウマチ)、フェーズ3はペフィシチニブ(関節リウマチ)、申請中はタクロリムス(臓器移植の拒絶反応の抑制(小児用顆粒製剤))。その他領域のフェーズ2はfezolinetant(更年期に伴う血管運動神経症状)、ASP1707(子宮内膜症)、CK-2127107(脊髄症筋萎縮症)、CK-2127107(慢性閉塞感性肺疾患)、CK-2127107(筋萎縮性側索硬化症)、ASP7317(萎縮型加齢黄斑変性、Stargardt病)、フェーズ3はイプラグリフロジン(1型糖尿病)、フィダキソマイシン(小児のクロストリジウム・ディフィシル感染症)、ASP0113(VCL-CB01)(造血細胞移植時のサイトメガロウイルス感染抑制)、申請中はロモソズマブ(骨粗鬆症)、イプラグリフロジン/シタグリプチン(2型糖尿病)、フィダキソマイシン(感染性腸炎(クロストリジウム、ディフィシル))、リナクロチド(慢性便秘症)

年収

アステラス製薬の平均年収の推移のグラフ。2012年度1014.7万円、2013年度1035.9万円、2014年度1055.9万円、2015年度1068.7万円、2016年度1073.1万円

年度別平均年収、平均年齢、平均勤続年数、従業員数の表。平均年齢(単体)は2012年度41.3歳、2013年度41.7歳、2014年度41.8歳、2015年度42.3歳、2016年度42.6歳。平均勤続年数(単体)は2012年度16.2年、2013年度16.6年、2014年度16.6年、2015年度17.0年、2016年度17.3年。従業員数(単体)は2012年度5802人、2013年度5777人、2014年度5408人、2015年度5217人、2016年度5186人。従業員数(連結)は2012年度17454人、2013年度17649人、2014年度17113人、2015年度17217人、2016年度17202人

アステラス製薬の基本情報

2017年5月更新

社名 アステラス製薬株式会社(Astellas Pharma Inc.)
本社所在地 東京都中央区日本橋本町2-5-1
設立 2005年4月1日
資本金 1030億100万円
上場 東証1部
代表者名 畑中好彦(代表取締役社長CEO)
主な事業所所在地 【支店】札幌市、仙台市、東京都台東区、東京都中央区、さいたま市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、高松市、福岡市
【研究所】茨城県高萩市、茨城県つくば市、静岡県焼津市
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