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武田薬品工業

武田薬品工業は、国内最大手の製薬企業です。売上高の6割以上を海外で稼ぎ、中でも米国が好調です。20146月には、日本の製薬会社では異例となる外国人社長、クリストフ・ウェバー氏が就任。「消化器系疾患」「オンコロジー」「中枢神経系疾患」「ワクチン」の4つに重点領域を絞り、日本の長期収載品の一部をイスラエル・テバとの合弁会社に移管するなど、次々と構造改革を進めています。

AnswersNews編集部による

武田薬品工業の企業分析

収益性回復 いまだ途上…ウェバー改革の成果は

2017/11/29 AnswersNews編集部 前田雄樹・山岡結央

国内の製薬企業で売上高トップに君臨する武田薬品工業。相次ぐ買収で売上高は順調に拡大しているものの、課題となっているのは収益性。「選択と集中」を掲げ、事業構造の見直しを進めていますが、成果はまだ数字となって表れていません。

「選択と集中」大胆に

20146月、日本の製薬企業としては異例の外国人社長、クリストフ・ウェバー氏の就任から3年余り。武田薬品は事業の「選択と集中」を大胆に進めてきました。「限られた治療領域に専念する」。175月の決算説明会でも、ウェバー社長はあらためて強調しました。

もともとは糖尿病など生活習慣病領域に強かった武田薬品。ウェバー氏の就任後、重点領域を「消化器系疾患」「オンコロジー」「中枢神経系疾患」「ワクチン」に絞りました。

それとともに、重点領域以外の事業を相次いで売却。呼吸器領域は英アストラゼネカに譲渡し、子会社で試薬を手がけていた和光純薬工業を富士フイルムに売却しました。164月には、イスラエル・テバと合弁会社「武田テバ薬品」を設立。ARB「ブロプレス」など長期収載品30品目を移管しました(174月にさらに7品目を移管)。研究開発体制の改革にも着手。拠点を日米に集約する方針を打ち出し、非重点領域はベンチャーを設立するなどしてパイプラインとともに切り離しました。

度重なる大型買収 償却・減損が利益圧迫

武田薬品がこうも事業構造の改革を急ぐのは、収益性の改善が急務だからです。

武田薬品の173月期の連結業績は、売上高17321億円(前年度比4.2%減)、営業利益1559億円(19.1%増)。大幅な増益となったものの、営業利益率は9.0%にとどまりました。これは、営業利益で国内製薬トップのアステラス製薬の半分以下。上場製薬企業33社の平均(13.7%)も下回ります。

営業利益率の推移のグラフ。2012年度7.9%、2013年度8.2%。2014年度には「アクトス」訴訟にかかる費用の影響で-7.3%と大幅に減益するも2015年度には7.2%まで回復

武田薬品は、米ミレニアム・ファーマシューティカルズ(08年)、スイスのナイコメッド(11年)、2017年には米アリアド・ファーマシューティカルズ(17年)と、みたび大型買収を行っています。

利益を押し下げているのは、毎年計上している多額の「製品に係る無形資産償却費及び減損損失」。買収した企業や製品・パイプラインなどの価値が下がった分だけ売上高からマイナス計上されるものです。武田薬品は毎年、営業利益とほぼ同じ額に相当する償却費と減損損失を計上。これが利益を圧迫しています。

減損のリスクは資産が増えるほど大きくなります。08年のミレニアム買収以降、9年間で増えた資産は約16000億円。17年のアリアド買収では総額54億ドルの買収費用のうち35億ドルを借り入れでまかない、負債が増加しました。

16年度のバランスシートを見てみると、1年以内に返済しなければならない「流動負債」が15年度から1.6倍に増え、1年以内に現金化できる「流動資産」を上回りました。これは、負債を返済するために新たな借入が必要な状態であることを意味します。

大型買収による資産構成の変化の棒グラフ(2016年度の総資産を100%として算出)2008年度から2016年度にかけて流動負債と有利子負債が増加

ミレニアム創製品が牽引 売上高は拡大

一方、売上高は順調に拡大しています。17年度は減収となったものの、円高や事業売却の影響を除くと6.9%の増収。潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」や多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」が成長を牽引しています。

主な業績項目の表。武田薬品全体の売上高は2012年度1兆5573億円、2013年度1兆6917億円、2014年度1兆7778億円、2014年度1兆8074億円、2016年度1兆7321億円。営業利益は2012年度1225億円、2013年度1393億円、2014年度は2型糖尿病治療剤「アクトス」の訴訟にかかる費用2741億円計上のため-1293億円と大幅に減少するも、2015年度には1308億円と回復、2016年度1559億円。医療用医薬品全体の売上高は2012年度1兆4047億円、2013年度1兆5321億円、2014年度1兆6145億円、2015年度1兆6487億円、2016年度1兆5689億円。内アメリカでの売上高は2012年度3268億円、2013年度3189億円、2014年度4195億円、2015年度5110億円、2016年度5167億円、日本の売上高は2012年度5901億円、2013年度5830億円、2014年度5613億円、2015年度5417億円、5016年度5047億円、2016年度では医療用医薬品の売上高ではじめてアメリカが日本を上回った

特に成長著しいエンティビオは、現在、世界60カ国以上で承認されており、16年度の売上高は1432億円。販売開始から3年足らずでブロックバスターに成長しました。178月には日本でも潰瘍性大腸炎を対象に申請。18年度中に世界で20億ドルを超える売り上げを目指しています。

アリアド買収で獲得したALK阻害薬の肺がん治療薬「ALUNBRIG」(一般名・ブリガチニブ)も期待の新製品。米国では4月に承認を取得し、欧州でも申請中です。アリアド買収時の会見でウェバー社長は、ブリガチニブの獲得で「(これまで血液がん中心だった武田薬品が)固形がんでも足場を持つことができる」とその意義を強調。ピーク時にグローバルで年間10億ドル超の売上高を見込んでいます。

エンティビオとニンラーロは、09年に約9000億円を投じて買収したミレニアムの創製品。度重なる大型買収の成果には賛否両論ありますが、ミレニアム買収で獲得した製品が武田薬品の売上高成長を支えています。課題はやはり収益性です。

世界レベルでコスト削減

収益性を向上させるため、武田薬品は事業構造の改革に加え、経費削減にも取り組んでいます。17年には「グローバル経費削減イニシアチブ」プログラムを開始。専任チームを置き、購買価格の低減や出張旅費など経費の削減を進めています。研究開発体制の再編でも、年間180億円のコスト削減効果を見込みます。

武田薬品が抱えるもう1つの課題が、これからの成長を担う開発後期のパイプラインが薄いこと。後期パイプラインの拡充のため、これからも買収やライセンスを行っていくことになるでしょう。そのためにも収益性の改善は急務です。

武田薬品は経営指標としてコア・アーニングス(売上総利益から販管費や研究開発費を除いたもの)を重視しており、19年度までの3年間で売上高に対する比率を毎年12ポイント改善することを目標にしています。

17年度の業績予想は、売上高17200億円、営業利益2000億円、コア・アーニングスは2675億円。コア・アーニングスの売上高比率は16年度比1.5ポイント増の15.6%を見込む一方、営業利益率は11.6%で依然として業界平均を下回ります。

利益率は回復傾向にあるものの、ウェバー改革の成果が明確な数字となって表れるにはまだ時間がかかりそう。収益性の改善に“特効薬”はありません。地道な取り組みが続きます。

武田薬品工業の主要情報

主要製品

武田薬品工業の主要製品の売り上げ(2016年度売上高/前年比)グローバル主要品目:ベルケイド(多発性骨髄腫治療薬)1376億円/-15.1%、リュープロレリン(抗がん剤)1142億円/-8.2%、パントプラゾール(消化性潰瘍治療薬)742億円/-26.3%、ランソプラゾール(消化性潰瘍治療薬)444億円/-50.4%、エンティビオ(潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬)1432億円/66.2%、カンデサルタン(高血圧症治療薬)342億円/-59.7%、デクスラント(逆流性食道炎治療薬)626億円/-16.6%、アジルバ(高血圧症治療薬)669億円/13.3%、ネシーナ(糖尿病治療薬)491億円/0.4%、コルクリス(痛風治療薬)389億円/-16.3%、ユーロリック(痛風・高尿酸血症治療薬)422億円/-0.7%、アミティーザ(便秘症治療薬)338億円/-9.3%、アドセトリス(悪性リンパ腫治療薬)301億円/9.1%、トリンテリックス(大うつ病治療薬)319億円/30.1%、タケキャブ(酸関連疾患治療薬)341億円、ニンラーノ(多発性骨髄腫治療薬)294億円。国内:アジルバ(高血圧症治療薬)669億円/13.3%、リュープリン(抗がん剤)486億円/-9.7%、エンブレル(抗リウマチ薬)404億円/-0.9%、タケキャブ(酸関連疾患治療薬)341億円、ネシーナ(糖尿病治療薬)329億円/-10.9%、ロトリガ(高脂血症治療薬)275億円/23.5%、ベクティビックス(直腸・結腸がん治療薬)188億円/2.1%、レミニール(AD治療薬)174億円/8.8%、ベネット(骨粗鬆症治療薬)83億円/-14.2%、ロゼレム(不眠症治療薬)81億円/8.7%、アドセトリス(悪性リンパ腫治療薬)33億円/5.2%

パイプライン

武田薬品工業の開発パイプライン(フェーズ2以降、2017年11月現在)がん領域のフェーズ2はポナチニブ(慢性骨髄腫白血病)、ポナチニブ(急性リンパ性白血病)、sapanisertib(乳がん)、sapanisertib(腎がん)、sapanisertib(子宮内膜がん)、pevonedistat(高リスク骨髄異形成症候群)、TAK-659(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)、フェーズ3はイキサゾミブ(移植後・初発の多発性骨髄腫(維持療法))、イキサゾミブ(移植未実施・初発の多発性骨髄腫(維持療法))、イキサゾミブ(再発・難治性の原発性ALアミロイドーシス)、ポナチニブ(イマチニブ耐性慢性骨髄性白血病)、relugolix(前立腺がん)、ブリガチニブ(ALK陽性非小細胞肺がん(フロントライン))、ブレンツキシマブベドチン(ホジキンリンパ腫(フロントライン))、ブレンツキシマブベドチン(成熟型T細胞性リンパ腫)、イキサゾミブ(多発性骨髄腫(初発))、イキサゾミブ(多発性骨髄腫(再発・難治性))、申請中はブリガチニブ(ALK陽性転移性非小細胞肺がん(クリゾチニブ後))、ブレンツキシマブベドチン(再発性皮膚T細胞性リンパ腫)、消化器系疾患のフェーズ2はベドリズマブ(ステロイド難治性の移植片対宿主病)、ボノプラザン(PPIで効果不十分な逆流性食道炎)、TAK-906(胃不全麻痺)、フェーズ3はルビプロストン(新規剤型)、ボノプラザン(非びらん性胃食道逆流症)、ベドリズマブ(クローン病)、ベドリズマブ(皮下投与製剤)、申請中はCx601(クローン病に伴う肛囲複雑痩孔)、ベドリズマブ(潰瘍性大腸炎)、ルビプロストン(小児機能性便秘症)。中枢神経領域のフェーズ2はTAK-935(希少小児てんかん)、フェーズ3はAD-4833/TOMM40(ADに起因する軽度認知機能障害)、ボルチオキセチン(大うつ病)、申請中はラサギリン(パーキンソン病)。ワクチンのフェーズ2はTAK-214(ノロウイルス)、TAK-195(ポリオ)、フェーズ3はTAK-003(デング熱)。その他領域のフェーズ2はrelugolix(子宮内膜症)、namilumab(関節リウマチ)、フェーズ3はrelugolix(子宮筋腫)

年収

武田薬品工業の平均年収の推移のグラフ。2012年度955.5万円、2013年度943.5万円、2014年度945.5万円、2015年度959.6万円、2016年度1015.1万円

年度別平均年収、平均年齢、平均勤続年数、従業員数の表。平均年収(単体)は2012年度955.5万円、2013年度943.5万円、2014年度945.5万円、2015年度959.6万円、2016年度1015.1万円。平均年齢(単体)は2012年度38.4歳、2013年度38.8歳、2014年度39.4歳、2015年度40.0歳、2016年度40.4歳。平均勤続年数(単体)は2012年度13.7年、2013年度14.1年、2014年度14.3年、2015年度14.5年、2016年度14.7年。従業員数(単体)は2012年度6544人、2013年度6578人、2014年度6780人、2015年度6780人、2016年度6638人。従業員数(連結)は2012年度30481人、2013年度31225人、2014年度31328人、2015年度31168人、2016年度29900人

武田薬品工業の基本情報

2017年5月更新

社名 武田薬品工業株式会社(Takeda Pharmaceutical Company Limited.)
本社所在地 大阪府大阪市中央区道修町4丁目1番1号
設立 1925年1月29日
資本金 657億円
上場 東証1部
代表者名 クリストフ・ウェバー(代表取締役 社長CEO)
主な事業所所在地 【支店】札幌市、仙台市、東京都千代田区、横浜市、名古屋市、 大阪市、神戸市、京都市、高松市、広島市、福岡市
【研究所】神奈川県藤沢市、大阪市
【工場】大阪市、山口県光市
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